新石器時代の生業や環境変化の指標となる島嶼出土イノシシ類の研究
【研究分野】考古学
【研究キーワード】
考古学 / 新石器時代 / 縄文時代 / イノシシ利用 / 家畜化問題 / 島嶼部 / 自然生息域外 / 家畜化 / 生業 / イノシシ / 島嶼 / 伊豆大島 / 骨計測学 / 幾何学的機能形態学
【研究成果の概要】
本研究は,日本の新石器時代における人間とイノシシとの関わりを知るために,生息域外の島嶼に持ち込まれたイノシシ遺体を動物考古学的に研究することを目的とした.今年度の調査は昨年度に引き続き,北海道、伊豆大島,八丈島出土の縄文時代のイノシシを対象に実施するとともに,新たに佐渡島から出土したイノシシも調査した,これによって、本州東部に位置する島で,縄文時代の遺跡から出土したイノシシ遺体のほとんどを調査することができた.また,対比する本州側の遺跡資料としては,福島県や青森県等の事例も追加した.これら遺体の分析方法としては,歯や四肢骨の計測値を用いたサイズの推定法と、歯の萠出状態や咬耗段階および四肢骨骨端の癒合状態に基づく年齢推定法を採用した.また,骨に残る栄養や病理に関する痕跡、解体や加工に伴う人為的痕跡、イヌ等の動物による咬み痕についても観察を行った。その結果,八丈島のイノシシ遺体にはこれまで指摘してきたサイズの小型化の他に、本土産イノシシとは異なる関節形態の変化や栄養不良の可能性が指摘された.管見では,これら特徴は本州出土のイノシシには見られなかったことから,イノシシが島という限定した環境の中で棲息したため生じた可能性があると推定された.そこで,同じ島環境に生息するリュウキュウイノシシを収集して、骨の形態を機能幾何学的に検討することにした.今回は西表島での調査によって全身骨3個体と頭骨13個体を収集し、骨計測学的研究および機能形態学的分析により島嶼の環境あるいは人為的影響がイノシシの形質に変化を与えているか否かを検討中である.また,島嶼出土のイノシシ遺体に対して同位体分析およびAMS年代測定も実施したが、島嶼出土のイノシシの同位体比は本州出土のイノシシとは若干異なる結果も得ることができた.今後は,これら分析をさらに進めて,島嶼出土のイノシシのもつ意味を追求する予定である.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
遠藤 秀紀 | 東京大学 | 総合研究博物館 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2007
【配分額】3,840千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 240千円)