神経細胞識別機構の分子生物学的解析
【研究分野】動物発生・生理学
【研究キーワード】
神経細胞 / 細胞識別 / 膜分子 / cDNAクローニング / 細胞接着 / 網膜 / 遺伝子導入 / 神経束形成 / 嗅覚系 / 神経発生 / 膜蛋白質 / 神経回路 / ニューロン
【研究成果の概要】
神経細胞間の特異的な結合は、神経細胞表面膜分子を媒介にした細胞識別がその基礎となって形成されると考えられる。本研究では、アフリカツメガエル神経系に発現する膜蛋白質プレキシン(plexin:従来名B2)の機能を明らかにするため、以下の2点について解析した。
1、アフリカツメガエル網膜におけるプレキシンの発現動態と機能の解析:プレキシン特異モノクローナル抗体MAbB2による免疫組織化学的な解析を行い、プレキシンはアフリカツメガエル脳や網膜の網状層に表現する分子量220kDの膜蛋白質であることを明らかにした。更に、発生早期の目の原基を抗プレキシン抗体存在下で培養すると、網膜の網状層の形成が阻害されることを明らかにした。このような結果は、プレキシンが網膜細胞の突起間の相互作用に関与し網状層の形成に重要な役割を演じていることを示唆している。
2、プレキシンcDNAのクローニング:膜蛋白質プレキシンの機能をより明らかにする目的で、プレキシンをコードするcDNAのクローニングを行った。その結果、プレキシンは膜貫通を一ヶ所持ち、細胞外領域にシィステインが豊富なドメインが3箇所ある既知の分子とは全く異なるユニークな膜分子であることが明らかとなった。更に、プレキシンcDNAを細胞接着能を持たないマウス株細胞(L細胞)に導入して強制発現させると、細胞接着能が生ずること、また、この細胞接着能は同種分子間の相互作用で起こり、Ca^<2+>依存性であることが明らかにされた。このようなモデル実験系で示された細胞接着能に基づいて、プレキシンが網膜細胞の相互作用や神経繊維の束形成に関与しているものと推察される。
【研究代表者】