マウス舌上皮in situカルシウムイメージング法の確立と水産食品複合味解析
【研究分野】水産化学
【研究キーワード】
マウス / カルシウムイオン / 味覚 / 情報伝達 / カルシウム / 化学受容
【研究成果の概要】
H16年度は,長時間の測定に耐えるマウス舌上皮in situカルシウムイメージング法の確立を目指した.2時間程度まで舌上皮味細胞の生物活性を保つため,灌流液の基本組成,灌流液の酸素濃度,灌流チャンバーの構造,薬液灌流方法およびその速度などを最適化した.甘味物質としてサッカリンナトリウム,苦味物質としてデナトニウム安息香酸塩,うま味物質としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)を採用し,それぞれ0.1から30mM程度の濃度範囲で味刺激を与え,その際の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を上述したカルシウムプローブの蛍光として捉えた.以上のようにして,甘味,苦味およびうま味に対する味細胞のカルシウム応答を多点同時観察する手法を確立できた.本法を用いて,甘味物質としてサッカリンナトリウム,苦味物質としてデナトニウム安息香酸塩,うま味物質としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)に対するマウス味細胞のカルシウム応答を明らかにした.まず,うま味受容体については,代謝型グルタミン酸受容体4型(mGluR4)の関与が示唆されているが,通常mGluR4の下流には抑制性Gタンパク質が存在し,サイクリックAMP(cAMP)の分解酵素であるホスホジエステラーゼ(PDE)が活性化されるため,細胞内cAMP濃度が減少するはずである.そこで,cAMPを合成する酵素アデニレートシクラーゼ(AC)の阻害剤SQ22536およびMDL12330Aを投与したところ,MSGに対するカルシウム応答は影響を受けなかった.このことから,本受容体が口腔内におけるMSG応答に関与する可能性は小さいものと考えられる.また,2次元多点測光でMSG応答性味細胞を特定した後,それらの味細胞がイノシン酸(IMP)に対して示す応答およびMSGとIMPに対する応答を調べたところ,非常に大きな相乗効果が認められた.これはこれまで明らかにされてきた現象が末梢レベルで発現していることを支持するものである.また,同様な検討から,還元型グルタチオンがMSGに対するカルシウム応答を増強することも明らかとなった.以上のように,今後は複合した味質間の相互作用についても注意を払う必要があるものと考えられる.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)