身体逆投射と記憶生成のためのバーチャルリアリティの基礎構造の解明
【研究キーワード】
身体感覚 / バーチャルリアリティ / 追体験 / 能動運動 / 身体運動感覚 / 運動主体感 / 逆投射 / 体験記憶 / 能動感 / 歩行運動 / 記憶
【研究成果の概要】
本研究の目的は,体験全体の記憶を生成するためのバーチャルリアリティの構造を解明することである.
歩行を対象とした実験により,実際歩行時の能動運動感は約70%であり,約20 %の受動運動感が存在することが示された.実際歩行時の能動運動感は,ランダムさを含む身体制御への負荷の程度に依存した.実際歩行をせずに歩行感覚を生成するVR では,歩行イメージによる運動意思によって内部モデルを賦活することで,能動運動感・歩行感覚の増加と受動運動感の低下の効果があることが示唆された.また,歩行感覚は,実写映像提示による無意識下での内部モデルの賦活によっても,増加することが示唆された.歩行イメージは,能動運動感と歩行感覚を増加させるが,実写映像と一定足音の同時提示によりその効果が増大した.
スティックを持った右上腕部の回旋運動によって物体を打撃する運動を例として,運動感覚を伝達する手法の能動感を評価した.運動を伝達する過程の水準は,実際運動実行,受動運動受容,運動イメージの3水準であり,その際に得られる能動運動感覚を評価した.その結果,受動運動においても感覚フィードバックを与えると片手運動の場合に約50 %の能動運動感覚が得られている.能動運動感覚への寄与が最大となる要因は,運動指令と結果の一致であり,次いで感覚情報であることが示唆された.すなわち能動運動感覚に寄与する要因について粗い推論を行うと,運動指令との一致感が最も寄与が大きく約35%,次に視聴触の感覚と固有感覚がそれぞれ約25%となることが推定された.
歩行の方向を変える旋回歩行について,実際歩行の感覚に対応する感覚を,前庭感覚ディスプレイおよび下肢運動ディスプレイによって提示するための制御量が明らかにされるとともに,能動運動感覚(運動主体感),受動感のディスプレイ提示依存性,映像提示との関係,さらに映像酔いとの関係が明らかとなった.
【研究代表者】