単一神経細胞内の転写因子の量的変化から解明する動物行動の変容機構
【研究分野】動物生理・行動
【研究キーワード】
CREB / C / EBP / モノアラガオ / mRNA / タンパク室定量 / 行動変容 / ELISA法 / 酵素サイクリング法 / 抗体カラム / 抗体 / real-time PCR / 学習記憶 / 分子動力学 / モノアラガイ
【研究成果の概要】
本研究の最終目的は,一つの神経細胞の中の特定の遺伝子発現が,どのように動物個体の行動変容を引き起こすのか,その機構を解明する手法を開拓し,そして実際に,遺伝子発現機構から生物の階層性に沿った形で行動変容機構を詳細に解明するところにあった.そこで行動変容の根元である学習・記憶のメカニズムに的を絞った.まずは,学習・記憶に関与している神経細胞一個の中の転写因子cAMP Responsive Element Binding Protein(CREB)ならびにCCAAT/enhancer binding protein(C/EBP)のmRNAおよびタンパク質を定量する方法を開発することを目指した.ここで言う定量とは,mRNAならコピー数,タンパク質なら個数を正確に計測することを意味する.単一神経細胞内のmRNAならびにタンパク質の定量について考えてみた.例えばCREBファミリーには,転写促進型のCREB1と抑制型のCREB2の両者が存在するという事実もあり,CREBの量的なダイナミクスを明らかにしなければ,ただ単にCREBが長期記憶形成に大事だという主張をいくら繰り返えしても意味がない.そこでその現状を打破するためにmRNAやタンパク質の定量方法の開発に挑んだ.しかもその定量では,脳組織という複数の神経細胞を扱うわけではなく,たった一つの神経細胞中のmRNA・タンパク質の量を測ることにした.たった一つの神経細胞内の変化を正確に測定する方法の開発が切に望まれている.次に,この計測方法を用いて,学習個体から単離してきた学習・記憶に関わる特定の単一神経細胞内でのCREBまたはC/EBPのmRNAならびにタンパク質の量的変化を確認した.その後,今度は逆に,その神経細胞中のCREBの量を人為的に変化させることによって,行動変容に至るどの階層性でどのような影響を与え得るのかを,階層性をボトムアップで昇って調べて行った.
【研究代表者】