ミズナラを取り巻く生物群集をモデル系とした生物多様性インヴェントリーと生態的分類
【研究分野】生物多様性・分類
【研究キーワード】
コナラ属 / 森林土壌分解系 / 樹冠観測システム / 生物参照標本 / 生物多様性 / 生命情報 / 野外実験 / リレーショナルデータベース
【研究成果の概要】
北海道大学苫小牧研究林(TOEF)におけるコナラ属樹木を取り巻く生物群集を解明するために、観察や採集を可能にするためのジャングルジム状の構造物を設置し、生物インヴェントリーと生態調査を行った。
生物インヴェントリーでは、キャノピーノックダウン法により植食者、捕食者、分解者の各ギルドの種構成と季節消長を明らかにした後、個別に、アブラムシ類、潜葉性昆虫類、地上徘徊性昆虫類、ミミズ群集、蛾類幼虫群集、ダニ類、およびチャタテムシ類の群集構造を明らかにした。また、特定のハビタットに着目し、樹皮下の昆虫相およびドングリを二次利用する節足動物群集を明らかにした。さらに、ネズミ類、シカおよび中型哺乳類の個体群動態の把握を行った。
生態的な側面では、実験的な手法により、種間相互作用の一部を解明した。生産系では、施肥および周辺伐採により餌としてのミズナラの葉の質が向上することがわかった。被食系では、ミズナラの葉の質は上層と下層で異なり蛾類幼虫群集の種構成も異なること、ミズナラ-カシワ雑種間の遺伝子構成の違いが食植生昆虫群集の多様度に影響を与えていることがわかった。分解系では、ミミズの除去により落葉の堆積量が多くなること、および、キタコブシの落葉が混ざることにより分解が早まることが明らかにされた。
これらの成果をウェブ上で公開すると共に、生物多様性研究を支援するための「包括的生命情報データベースシステム」、すなわち、あらゆる生物群に適用可能な汎用検索システム(生物分類検索システム:BioCIS)、コンテンツマネジメントシステムを利用する汎用テーブルデータベースおよび汎用階層データベース(分類体系情報、参照標本情報、食物網、生活史情報を提供)を開発し、共用公開した。
【研究代表者】