シロアリ腸内原生生物の多種共存機構の解明
【研究キーワード】
多種共存 / 種多様性 / エコタイプ / 原生生物 / 腸内微生物叢 / 種分化 / シロアリ / 共生 / シングルセル
【研究成果の概要】
令和2年度までに、ヤマトシロアリ腸内オキシモナス目原生生物群集を対象とした1細胞18S rRNA遺伝子解析および網羅的18S rRNA遺伝子解析を行ってきた。これらの遺伝子データに基づき、種分化シミュレーションを試行した結果、33種のオキシモナス目原生生物が共存する可能性が示された。令和3年度は、特に同シミュレーションのパラメータの最適化を中心に、種推定の信頼性を検証した。令和2年度までのシミュレーションにおいて、遺伝的浮動にあたるパラメータ値の設定範囲が対象とするオキシモナス目群集に適したものであるか、具体的には、小さすぎるのではないかという疑問があった。そこで、遺伝的浮動また自然選択にあたるパラメータ設定をこれまでより広くとった。同オキシモナス目群集の集団サイズは比較的小さくまた垂直伝播時に強いボトルネックがかかることが予想されるにもかかわらず、同群集における遺伝的浮動の影響は非常に小さく、その一方で自然選択が強く働いているという可能性が示された。また、異なる生息地のヤマトシロアリ腸内オキシモナス目群集について解析を行った結果、これまで推定された33種のうち30種が異なる生息地のヤマトシロアリ腸内から検出された。本研究で推定したオキシモナス目原生生物33種の多くが、シロアリおよび腸内共生関係において必須の機能を保有している可能性が考えられた。現在、推定された各種の機能解析をすすめている。
並行して、令和2年度より引き続き、ヤマトシロアリを含めたReticulitermes複数種とオオシロアリの腸内オキシモナス目原生生物群集を対象に網羅的な分子系統解析を行なっている。未知系統(種)が予想より多く検出されるなどの問題に直面しており、さらなる解析が必要だと考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)