光合成部分反応の温度依存性解析に基づく葉の光合成系温度馴化メカニズムの研究
【研究分野】生態・環境
【研究キーワード】
光合成 / 温度馴化 / Rubisco / 内部コンダクタンス / 地球温暖化 / 電子伝達
【研究成果の概要】
植物の葉では、栽培温度に応じて光合成速度の温度依存性が変化する。,光合成モデルに基づくと、光合成速度はカルボキシレーション速度とRuBP再生産速度とのどちらか遅い速度によって決定される。RuBP再生産速度はチラコイド膜の電子伝達速度によって律速を受けると考えられており、いくつかの植物において、電子伝達速度の温度依存性が栽培温度によって変化することが報告されている。しかし、実際にRuBP再生産速度の温度依存性が電子伝達速度によって決定されるのか、そして、それが光合成速度の温度依存性に影響を及ぼすのかを定量的に解析した研究はほとんどない。そこで、15℃、30℃で栽培したホウレンソウ葉を用いて、光合成速度の温度依存性の変化にRuBP再生産速度が関与するのかどうかを解析した。
それぞれの温度で栽培した葉からチラコイド膜を単離して、電子伝達速度を測定した。電子伝達速度の温度依存性は栽培温度によって異なっていた。また、電子伝達速度の温度依存性は、PSII周辺の電子伝達速度によって律速されることが分かった。光合成モデルに基づいて、電子伝達速度に律速されるときのin vitro RuBP再生産速度を見積もった。ガス交換測定から、in vivo RuBP再生産速度を評価することができるが、それはin vitro RuBP再生産速度の温度依存性と一致していた。つまり、RuBP再生産速度の温度依存性はチラコイド膜の電子伝達速度によって律速されることが分かった。最後に、光合成速度の律速要因について調べた。これまでの申請者の研究結果と合わせると、現在の大気CO_2濃度における光合成速度は、30℃葉において、低温側でRuBP再生産速度とカルボキシレーション速度によって律速されたが、高温側ではRuBP再生産速度によって律速を受けていた。また、15℃葉においては、全温度領域でカルボキシレーション速度のみによって律速されることが明らかとなった。
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】2,800千円 (直接経費: 2,800千円)