生理過程からスケールアップした冷温帯林生態系の撹乱・環境応答:ふたつの大陸東岸の比較解析
【研究分野】生態
【研究キーワード】
光合成特性 / 菌根菌 / 群集構造 / 栄養動態 / シュート構造 / シュートベースモデル / 多変量解析 / 落葉広葉樹林
【研究成果の概要】
本プロジェクトでは,変動環境のもとでの森林生態系の自律的維持と応答のメカニズムを解明するために,北海道中南部の冷温帯性落葉広葉樹林の構成樹種を主対象として,光合成系・通導支持系・栄養獲得系の生理素過程の応答から個体の生長,さらには群集動態にスケールアップしていく理論的・実証的な研究を実施した.
二酸化炭素上昇実験区・圃場・野外の森林とさまざまなスケールで,生理諸過程のパラメータ測定と個体への統合過程を解析した.二酸化炭素に対する作物種の個体レベルの応答の種差を解析した.野外森林レベルでの撹乱応答を明らかにするために,施肥と伐採をおこなう操作実験を実施した.撹乱処理による葉の光合成特性の変化や被食率の上昇は,樹種によって異なっており,こうした種差をもたらす生理的な機構を解明した.アーバスキュラー菌根の形成率は,施肥で低く,伐採処理とは独立だった.集団葉群光合成モデルを,光・窒素律速を組み込んで一般化した.
シュートベースの3次元樹形形成過程の研究は,モデル植物としてホウノキとモミ属を対象としてすすめた.ホウノキについては,分枝規則の抽出をし,一部の枝が短枝化する現象が,葉の相互被陰を避けるメカニズムとしては機能せず,光合成による同化物生産が十分でないときの節約型の樹形形成機構であることをシミュレーションによりあきらかにした.分枝規則がすでに定量化されているモミ属については,集団状態での発達過程をPipeTreeというシミュレータで記述した.集団の発達にともなって,シュートモジュールの特性が変化することが,観測される現象を再現するのに必要であることが明らかになってきた.
【研究代表者】