現代日本の社会意識の構成にみる共生/分断への志向性と学校教育経験との関わりの分析
【研究キーワード】
共生 / 分断 / 社会意識 / 世代 / 学校教育経験 / 社会科教育 / 共生社会 / 社会調査 / 格差 / 学校知
【研究成果の概要】
本研究は、社会意識調査を通して、現在の日本社会に「共生」および「分断」への志向性がどのように構造化しているのか、そこに学校教育での経験と得られた知識・認識がいかに関わるのかを探索している。学校教育は社会化の装置であるという点において社会の統合や凝集性を促すものであるが、他方で教育大衆化以降の日本の教育空間はより顕著な選別の場となり、人びとの社会意識の懸隔を広める場ともなってきた。「共生」と「分断」への志向性の様態とその背景をみることによって、教育経験を通して伝達される社会統合の論理の社会的帰結を析出することが、本研究の目的である。
2021年度は大きく2つの課題を設定して研究活動を進めた。第1に、戦後日本における社会科教育の性格の変遷に関する調査研究を進め、これまでの研究で把握してきた1950年代以来の中等教育用社会科教科書の内容の特徴と併せて、学習内容の世代差を示す指標を作成した。
第2に、2021年1月に行った社会意識調査のデータを分析し、社会的共生を阻害する諸個人の意識やその背景要因を構造的に明らかにする作業を行った。前回調査の内容に「ジェンダー」「セクシュアリティ」に関わる共生社会意識、および「コロナ禍のなかの行動と意識」を把握する質問項目を追加し、1都5県の20代と40代を対象として回答者1000人から得られた社会意識データをもとに、世代ごとの特徴に焦点を当てた分析を進めた。分析知見は2022年1月に論稿集『コロナ禍のなかの社会意識――2021年調査報告』(早稲田大学共生教育社会学研究室)として発行し、国立国会図書館および複数の大学図書館に納本した。新型コロナウイルスの世界的蔓延の最中の日本社会の状況を記録したことを、この成果の意義として主張することができる。さらに、次回調査のために「人びとが共生をどう理解しているのか」を把握するための質問項目の立案を行った。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)