植物細胞におけるヘム依存レトログレードシグナルの分子機構の解明
【研究キーワード】
ヘム / 葉緑体 / レトログレードシグナル / 情報伝達 / トランスポーター / テトラピロール / 色素体 / シグナル伝達 / レトログレード
【研究成果の概要】
本研究では、植物細胞におけるヘム依存レトログレードシグナルの分子機構の解明を目的としている。その解明には、情報伝達に関わる、感知、伝達、応答の機構を明らかにすることが重要である。今年度はヘム依存レトログレードシグナルの伝達機構の解明を目的として、ヘム結合性ABCトランスポーターの解析を中心に行った。
ヘム結合性を示したシロイヌナズナABCG23はヒトABCG2と同様、N末端側にヌクレオチド結合部位、C末端側に6回の膜貫通領域を有する、Half-molecule typeのABCトランスポーターである。ABCG23の5番目と6番目の膜貫通療育の間に、大きなループ領域が存在し、この領域のみでヘム結合性を示すことを見出している。さらに、このループ領域は他のポルフィリンに対しても結合親和性を持つことを、吸光スペクトルのシフトおよびトリプトファン消光実験により明らかにした。さらにこのループ領域内に存在する2つのシステイン残基が分子内ジスルフィド結合を形成すること、還元によりジスルフィド結合が解離するとヘム結合性が低下することを、ヘミンアガロース結合実験およびトリプトファン消光実験から明らかにした。さらにシステインを変異させた変異タンパク質を作出して解析した結果、これら2つのシステイン残基によるジスルフィド結合の形成がヘム結合性に関与することを明らかにした。
以上の結果は、ヒトのABCG2とは異なり、植物細胞内におけるレドックス状態に応じて、ループ領域内に形成されるジスルフィド結合により、シロイヌナズナABCG23のヘム輸送活性が制御されることを示唆している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)