高浸透圧のキナーゼ反応増強作用による環境ストレス応答の新奇制御機構
【研究キーワード】
高浸透圧 / MAPキナーゼ経路 / リン酸化 / 酵母 / 出芽酵母 / シグナル伝達 / MAPキナーゼ / キナーゼ / センサー
【研究成果の概要】
本研究では、酵母の高浸透圧応答性Hog1 MAPK経路で見出した高浸透圧による細胞質局在キナーゼのリン酸化増強作用の仕組みの解析を行なった。リン酸化増強の作用点として(1)Pbs2 MAP2K-Hog1 MAPK反応過程、(2) Ssk2 MAP3K-Pbs2 MAP2K反応過程の2つが存在する。特に(2)のリン酸化増強については仕組みが全く不明であるため、(2)に焦点を当てて解析した。まず、高浸透圧応答に必須な上流のSln1センサーの破壊株などを使った分子遺伝学的、生化学的解析から、このリン酸化反応過程が実際に高浸透圧増強を受けることを示した。またこの反応増強にSsk2と結合するレスポンスレギュレーターSsk1の特定の領域が必要なこともわかった。(2)の反応増強はPbs2のリン酸化を指標にしているため、現時点では高浸透圧により、Ssk2の活性が増強しているのか、Pbs2がリン酸化を受けやすくなっているのかがわからない。そこで、Ssk2の制御領域への系統的欠失変異の導入、Pbs2のランダム変異導入によって、高浸透圧によるリン酸化増強を模倣した変異体の単離を試みた。その結果、Ssk2、Pbs2両者で高浸透圧なしでも恒常的にHog1経路を活性化する変異体の取得に成功した。
高浸透圧によるPbs2リン酸化増強の理由として、リン酸化が高浸透圧で増強される可能性に加え、Pbs2の脱リン酸化が高浸透圧によって抑制される可能性も考えられる(Pbs2のリン酸化レベルはどちらの場合も上がる)。そこでPbs2の脱リン酸化に関わるホスファターゼを探索し、Ptc1を責任ホスファターゼの一つとして同定した。
以上より、(2)のリン酸化増強の仕組みの解明に向けて、本年度の研究で複数の手がかりを得ることができたと考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)