超好熱古細菌の炭酸同化酵素および電子伝達系成分の分子構造比較に基く系統解析
【研究分野】系統・分類
【研究キーワード】
超好熱菌 / Pyrobaculum islandicum / 炭酸同化酵素 / フェレドキシン / 系統進化 / 独立栄養生物
【研究成果の概要】
超好熱菌は原始生化学反応を推し量る格好の材料であり、特にその酸化還元反応を司る電子伝達系の構造機能相関の究明は、生物のエネルギー代謝の共通原理を理解するうえで重要と考えられる一方、これまで効率よい培養法が確立されにくい調達困難な研究対象だった。ところが、最近申請者らの開発した系によって簡易な装置で充分な細胞量が安定に得られるようになった。そこで本研究は、超好熱菌と原始生物からの初期系統との関連を知る有力な手掛かりを得るため、まず超好熱性古細菌の一種であるPyrobaculum islandicumに存在する電子伝達系蛋白(フェレドキシンならびにヘムを補欠分子族として含むチトクロムb)の単離同定とその解析を行った。
精製蛋白をEPR解析し金属定量を行った結果、この超好熱菌のフェレドキシンは独特な3Fe-4S型鉄イオウクラスターを含むことが明らかになった。さらに、全一次構造を解析するため、精製標品をトリプシンおよびV_8プロテアーゼで分解して分画したのちそれぞれのペプチドを解析し現在50残基以上を決定した。他方、チトクロムbは分子量82Kのヘテロダイマー構造をとることがわかった。ピルビン酸2-ケトグルタル酸を基質として、2-オキソ酸フェレドキシンオキシドレダクターゼがフェレドキシンと電子の授受を行うというこの古細菌特有の電子伝達経路を示唆する間接証拠も得られた。今後は、精製酵素のペプチド配列および構造既知の保存された配列情報に基き、PCR法によるチトクロムbの遺伝子をクローニングすると同時に、Rubisco遺伝子を単離することによりこの超好熱菌の進化的位置ならびに炭酸固定反応の作用機構を検討する予定である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1995
【配分額】800千円 (直接経費: 800千円)