熱帯インド・太平洋の海底洞窟生物群の自然史科学的研究
【研究分野】系統・分類
【研究キーワード】
古生物学 / 海底洞窟 / 二枚貝類 / 巻貝類 / 進きた化石 / 貝形虫類 / 進化 / 大量絶滅 / 生きた化石 / 実形虫類 / 海洋生物学 / 生物地理 / 生きている化石 / 軟体動物 / 甲殻類
【研究成果の概要】
研究代表者は、海底洞窟性巻貝のムシロガイ科、ソビエツブ科の分類学的研究を進め、多数の新種を見いし(貝類学雑誌に発表)、パラオの1海底洞窟から、アマオブネガイ類に類縁の可能性のある未知種(新属・新種)を発見した(発表予定)。この巻貝は、これまで知られているどのグループにも類似しない風変わりな形態を持ち、海底洞窟特有のグループと判断された。
研究分担者の速水は、二枚貝類の殻サイズの時代変化と海底洞窟の同類の繁殖戦略の比較から、地質時代の生物の大量絶滅の要因について、新たな仮説(貧栄養仮説)を提唱した(遺伝に発表)。深海と同様に、海底洞窟の二枚貝類は貧栄養環境への適応として、殻サイズが極端に小さい。大量絶滅時には、その前後の時代と比べて、二枚貝類は小型化していることをつきとめた。限石衝突や他の地質的事変が海洋の貧栄養をもたらし、その結果、大型種(或いはグループ)が差別的に絶滅したものと解釈された。
研究分担者の武田は、パラオの海底洞窟の調査から、6種のカニ類を見いだした(Natural Environmental Sci.Res.に発表)。これらのうち、クモガニ科のSchlzophyrys dahlakは、これまで紅海南部にのみ知られていた種で、ワタリガニ科のCharybdis paucidentataはペルシャ湾、紅海と西インド洋に知られていた種である。また、ワタリガニ科の3種(オオハシカルパガザミ、ナキガザミ、Charybdis paucidentata)は、海底洞窟特有の種である可能性が強く示唆された。
研究分担者の田吹等は、海底洞窟から新たな「生きた化石」貝形虫の新属新種を見いだし、その起源を論じた(イギリス古生物学会誌に発表予定)。この新属は、深海に棲むCardobairdiaから進化したもので、捕食者の少ない海底洞窟に適応することで生き残ったと考えた。
【研究代表者】