中国語語圏における遠隔授業に見られる異文化交流の新しい可能性と問題点
【研究分野】中国語・中国文学
【研究キーワード】
遠隔授業 / 異文化コミュニケーション / 言語習得 / コーパス / 学習スタイル / 学習環境 / 対話チャンネル / 教員の役割 / 対面式授業 / 主体的学習 / 自他認識 / コミュニケーションギャップ / 心理場(psychological field) / 教学支援 / Q&A庫 / 教員の関与 / インターアクション / 異文化交流 / 国際共同研究
【研究成果の概要】
遠隔接触場面(以下、「遠隔」)の実態を客観的に把握し、学習者と母語話者の談話特徴を分析し、「遠隔」による新しい授業形態の可能性を明らかにすることが本研究の目的である。3年間の研究期間を通して、遠隔授業及び従来型授業のビデオを文字化し、100万字以上の談話コーパスを構築した。談話内容を瞬時に母語別、話題別、授業形態別に検索し、計量的に分析可能となった。研究成果としては主に以下の通りである。
1)授業形態の研究。遠隔授業と従来型授業における学習者と母語話者の発話を分析し、学習者の学習スタイルやコミュニケーションの特徴を検証してきた。「遠隔」では、心理的な場が共有されにくく、コミュニケーション障害が起こりやすいこと、教員はコーディネーターやサポーター役に徹する必要があることを指摘し、授業テーマの吟味、複数交流チャンネルの併用、教具の活用など、具体的提案を行った。
2)言語習得の研究。談話コーパスによって学習者と母語話者の文法使用状況を網羅的に調査し、その傾向と原因を分析した。「遠隔」では、心理的プレッシャーと文法習熟度と複雑に絡み合い、学習者の言語使用に影響があると指摘した。また、学習者のフィラーは、頻度は高いが単純化する傾向があり、言語能力が低く評価される可能性があることを指摘した。
3)異文化コミュニケーションの研究。「遠隔」は異文化接触場面でもある。異文化接触の機会は貴重ではあるが、不要な文化衝突を避けるためには、身近な話題をテーマとしたほうがよい。TV会議による遠隔接触場面の交流では「あるカテゴリーに属する自分」として自文化の代言者になる傾向がある。個人レベルの交流を促進するために、ビデオチャットなど1対1の対話チャンネルの併用が重要であることを指摘している。
本研究で構築してきたコーパスは、プライバシー保護のためのいくつかの作業を経た上での公開となる。
【研究代表者】