STAT5標的遺伝子の生理機能と情報伝達機構に関する共同研究
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
JAK / STAT / サイトカイン / SH2ドメイン / チロシンキナーゼ / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / ユビキチン / りん酸化 / 情報伝達 / CISファミリー
【研究成果の概要】
サイトカインは受容体の細胞内ドメインに会合するJAKチロシンキナーゼを介して細胞内にシグナルを伝える。STATはそのシグナルを核へ伝える重要な転写因子のひとつである。
一方サイトカインシグナルを負に調節するメカニズムやサイトカイン間のクロストークの分子レベルでの解明も進んできている。われわれはSTAT5の負のフィードバック調節因子であるCIS1,JAKキナーゼの阻害因子であるJABをクローニング、さらにこれらを含むCISファミリーの存在を明らかにした。本研究では培養細胞を用いて、CISは受容体に結合することでSTAT5を抑制し、JABおよびCIS3は直接JAKのチロシンキナーゼドメインに会合しその活性を抑制することを明らかにした。CIS3,JABのノックアウトは完成しており現在解析中である。次にJABおよびCIS3のJAKシグナル抑制の分子機構を明らかにするために欠失変異や両者で保存されているアミノ酸に様々な点変異を導入し構造活性相関を行った。その結果JAB,CIS3のSH2ドメインはJAK2のactivation loopに存在するY1007にSH2ドメインを介して結合することを発見した。しかしJAK活性化抑制にはSH2ドメインだけでは不十分で近接したアミノ酸約12個の部分が必須であり、この部分はJAB,CIS3でよく保存されている。この領域をキナーゼ阻害領域と名付けた。またこのN末端部分がないとJAKへの結合力が極端に落ちることからJAB,CIS3はSH2ドメインでactivation loopと、さらにN末端部分でJAKの活性中心に結合していると考えられる。がんで重要な働きをするチロシンキナーゼの阻害因子の分子機構が明らかにされた意義は大きい。CIS1はサイト力イン受容体に会合するがそれだけでSTAT5の活性化を抑制できるかどうか不明である。我々はフランスのグループとともにCIS1がユビキチン化されすみやかに分解を受けることを見い出した。チロシンりん酸化されたSTAT5もまたユビキチン化によって分解されることが知られており、CIS1が何らかの機構でSTAT5の分解を促進している可能性が考えられる。今後阻害の分子機構をより詳細に解明したい。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
MAYEUX Patri | Institute Cochin de Genetique Moleculair | 主任研究員 |
IHLE James | St. Jude Children&/39;s Hospital生化学部 | 部長 |
安川 秀雄 | 久留米大学 | 分子生命科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
大坪 素秋 | 久留米大学 | 分子生命科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
JAMES Ihle | St.Jude Children&/39;s Hospital, Department of Biochemistiry, Professor |
PATRICK Mayeux | Institute Cochin de Genetique Moleculaire, Department of Cancer Research, Profes |
NEWMANN Dror | TelAviv大学 | 医学部 | 講師 |
三澤 宏之 | 久留米大学 | 分子生命科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】国際学術研究
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】7,900千円 (直接経費: 7,900千円)