極低温下でのX線、中性子蛋白質結晶解析のための結晶冷装置の研究開発
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
蛋白質 / 放射線損傷 / 低温結晶解析 / 大型放射光 / 低温冷却 / 低温蛋白質結晶学 / X線結晶構造解析 / 構造生物学 / X線解析 / X線回折 / 放射光X線 / 中性子回折
【研究成果の概要】
大強度X線の利用が可能な大型放射光ビームラインでは、100Kにおいてさえ放射線損傷が生じることが明らかとなってきた。この現象は、10^<12>〜10^<13>photon/秒にもおよぶ大強度X線によってガラス状に凍結された水が部分的に溶解し、発生したラジカルが拡散している可能性を強く示唆するものであった。この現象に立ち向かうには更に低い温度での回折実験が有効であることが低温電子顕微鏡法による生体高分子の観察において明らかにされている。本研究では、従来の低温窒素ガス吹き付け型結晶冷却装置と変わりない操作性を有し、試料を35K程度に冷却可能な吹き付け型結晶冷却装置の開発を行った。同装置の実現は、蛋白質結晶の放射線損傷低減にとどまることなく、室温下ピコ〜ナノ秒程度の時間領域で発生する蛋白質等の反応中間状態を凍結した構造解析や分光測定を用意に可能とし、35K〜80Kの温度範囲に相転移を有した物質の構造解析を含めた物性測定に威力を発揮するものと期待される。今回の装置開発では、より低い到達温度が実現可能なヘリウムガスを冷却媒体として用い、目標温度範囲35K〜300K、温度精度0.5Kを達成した。本装置を大型放射高施設スプリング8のビームライン41XUに設置し、蛋白質(鞭毛構築蛋白質、シタロン脱水酵素変異体)や巨大生体分子複合体(光合成器官II、F1-ATP合成酵素)の極低温X線回折強度データ収集を実施した。
また、従来から開発を行ってきた液体窒素温度周辺での低温結晶解析技術を駆使して、多数の蛋白質の結晶構造(グルタミン酸脱水素酵素、キラートキシン、筋小胞体カルシウムポンプ、シタロン脱水酵素等)や蛋白質の水和構造を明らかにし、.蛋白質内部振動の温度依存性についても精度の高い測定を行った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
澤野 成民 | 理学電機株式会社 | システム設計部・機会設計グループ | 技師補(研究職/">(Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】9,800千円 (直接経費: 9,800千円)