エリスロポエチン受容体を介する増殖および分化シグナルの解明
【研究分野】医化学一般
【研究キーワード】
チロシンキナーゼ / JAK / STAT / CIS / ノックアウトマウス / サイトカイン / エリスロポエチン / 胎児造血 / エリスポエチン / エリスロポエチン受容体 / シグナル伝達 / 細胞分化 / SH2ドメイン / りん酸化 / 情報伝達 / CISファミリー
【研究成果の概要】
赤血球造血の制御機構を解明するために我々は造血幹細胞に特異的に発現する遺伝子の解析を行った。まず骨髄細胞をセルソーターにて造血幹細胞を分画し、この細胞集団からPCR増幅を経てcDNAライブラリーを作成した。これを酵母two-hybrid用のベクターに組み込み、c-kitをbaitとしたスクリーニングを行った。その結果STAP-1と呼ぶ新規遺伝子をクローニングした。この遺伝子はPleckstrin homology(PH)ドメイン,Src homology 2(SH2)ドメインを有するアダプター分子でc-kitによってチロシンりん酸化された。RT-PCRの結果、STAP-1の発現はc-kitを有する骨髄細胞に限局することが明らかとなった。また最も高い発現はCD34 low/-Sca-1+c-kit+Lin-の幹細胞分面に得られた。現在生化学的な解析を行っている。
次にエリスロポエチン受容体からのシグナルを制御する分子として、我々がクローニングしたCIS3の機能解析を行った。CIS3は胎児肝臓の赤芽球前駆細胞に強く発現していた。生理機能を明らかにするためにノックアウトマウスを作成した。CIS3-/-ノックアウトは胎性致死であり、受精後12日以前は野生型と大きな形態の差はないが12.5-15日胚では全身での出血が見られた。また特に肝臓では構造が崩れており有核の胎児型赤血球で充満していた。胎児肝細胞をEPO存在下で培養すると野生型マウスにくらべてはるかに大きなBFU-E(前期赤芽球前駆細胞)コロニーが形成された。また赤芽球前駆細胞においてCIS3とJAK2の会合が確かめられた。したがってCIS3は胎児造血幹細胞においてEPO/JAK2シグナルを負に調節する因子であることが示された。
【研究代表者】