NiFe型ヒドロゲナーゼの成熟化における一酸化炭素の輸送機構の解明
【研究キーワード】
ヒドロゲナーゼ / 金属酵素 / 結晶構造解析 / 一酸化炭素 / 過渡的複合体
【研究成果の概要】
本研究では、NiFe型ヒドロゲナーゼの活性中心構築(成熟化)過程の解明に向けて、鉄錯体の形成に関わるHypC, HypD, HypXの過渡的な複合体構造の決定を目指している。
前年度はHypXによって生成された一酸化炭素を受け取る2つのタンパク質HypCとHypDの結晶構造解析に成功した。前年度に得られたHypCの結晶構造は非生理的なジスルフィド結合に伴う二量体を形成していた。そこで、今年度はチオール還元剤を含んだ溶液条件でHypCの結晶化条件を探索して、硫酸アンモニウムを沈殿剤とする条件で結晶を得た。X線回折測定と構造計算によって、HypC単量体の結晶構造を2.2 angstrom分解能で決定することができた。
一方、前年度に得られたHypDの結晶構造はC末端ドメインの温度因子が高く、信頼性の高い構造モデルの作成が困難だった (Rfree>0.27)。今年度、改めて試料調製とX線回折測定を行なった。構造精密化計算の結果、1.5 angstrom分解能 (精密化終了後のRfree: 0.20) で構造決定した。興味深いことに、前年度得られた構造と異なり、この構造ではC末端ドメインの温度因子は低く、側鎖の電子密度も明瞭だった。また、N末端領域や一部のループの構造にも違いが見られた。複数の結晶から得たデータを比較したところ、今年度測定した結晶の中にも、前年度と同様のC末端ドメインの温度因子が著しく高い構造が混在していた。このような構造の違いは、精製ロット、結晶化条件、結晶の形状、空間群、格子定数などから見分けることはできなかった。“同じタンパク質の同じ格子定数の結晶から得た構造は同じである”ことは広く受け入れられており、非常に稀な事例であると言えよう。
前年度につづき、HypC-HypD-HypX三者複合体の結晶化スクリーニングを継続しているが、結晶は得られていない。三者複合体試料については、結晶構造解析に並行して、X線小角散乱とクロスリンク質量分析を行なった。現在、データの解析を進めている。
【研究代表者】
村木 則文 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 生命創成探究センター 助教
(Kakenデータベース)【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)