DnaAドメインIVを用いた新規抗菌剤の探索開発プロセスの研究
【研究分野】分子生物学
【研究キーワード】
DNA複製 / 細胞周期 / DnaAタンパク質 / 大腸菌 / DNAポリメラーゼ / AAA^+ファミリー / ATP / 抗菌剤 / DNA結合 / NMR / X線結晶解析 / AAA+ファミリー / 染色体複製制御
【研究成果の概要】
多剤耐性菌の出現や、新興感染症が次々と発生するなど、新規抗菌剤への社会的需要は高い。DnaA蛋白質は細菌類に広く保存されており、染色体の複製に必須である。DnaA蛋白質(52kDa)のC末端10kDa断片に、この特異的DNA結合能が担われていて、ドメインIVと呼ばれる。DnaA機能阻害剤開発のため、本研究計画前半では、このドメインIV蛋白断片を用いて、活性スクリーニング系の開発、3次元構造解析をまず目指すことにしている。実際、大量生産株を作成し、このドメインのみからなる蛋白断片の精製に成功し、かつ、このドメインIV蛋白には、特異的DNA結合能があることを証明した。さらに初めて、NMRによる構造解析を行い、DnaAドメインIVの^1H,^<13>C,^<15>Nの化学シフトを同定し各アミノ酸残基の帰属も決定した。この成果に基づき、DnaAドメインIVの溶液中での2次構造の決定に成功した。さらに並行して、X線結晶解析による構造解析を行うため、この蛋白ドメインとDNAとの複合体の結晶化を進めて、共結晶の2.5Å解像度での放射光回折データを得、さらに、重元素置換型結晶解析と構造計算を進め、3次元構造を解くことに成功した。この成果により、DnaAタンパク質とDNAとの相互作用機構が分子原子レベルで解明された。以上のような研究進展にあわせて、阻害剤のスクリーニングを行い、新規薬剤候補となる分子を見出した。以上のことから、本研究ではDnaAドメインIVの機能構造解析に基づき理論的に薬剤を選別し、新規抗菌剤の開発研究へと展開するシステムの確立に成功した。
【研究代表者】