既存モチーフ配列を有さない革新的テルペン合成酵素の探索研究
【研究キーワード】
テルペン / 生合成 / 遺伝子 / 酵素 / 環化 / 反応機構
【研究成果の概要】
当該代表者は、既知のテルペン合成酵素とはアミノ酸配列相同性を示さず、また既知の金属結合モチーフをもたない、生物活性物質Xの生産に関与する新しいテルペン合成酵素Yを発見した。そこで、本研究では、新たに発掘する酵素の機能解析を行うことで、これまで誰も入手し得なかったテルペン化合物の発見を目的とした。
初年度は、テルペン合成酵素Y(TC2)をコードする遺伝子を大腸菌で発現させて組換えタンパク質を得て、機能解析を行うことを目的とした。TC2遺伝子をクローニングしたプラスミドpET-28a(+)-TC2で大腸菌BL21(DE3)を形質転換して、TC2が可溶性画分として得られる培養条件を検討した。その結果、TB培地を用いた際、誘導剤であるIPTGが10 microMでわずかに発現、100 microMではTC2は大量に発現したが、ほとんど可溶画分には検出されなかった。さらに、Hisタグを用いて組換えTC2を精製するため、Ni-NTAレジンカラムで精製を試みたところ、可溶性酵素として0.3 mg程度得られた。次に、この精製した酵素に基質と考えられたGGDPとMg2+を加えてインキュベートし、反応産物を酢酸エチルで抽出、濃縮後、GC-MSで分析したところ、TC2を発現させた組換え麹菌で生産された生物活性物質Xと同一物質であることが判明した。以上の結果より、TC2が生物活性物質Xを生合成する酵素遺伝子であることを明らかにすることができた。これは、生物活性物質Xの生合成遺伝子を同定した初めての例として重要な知見である。
加えて、酵母であるPichia pastorisを用いたTC2の組換え酵素の取得も検討した。しかしながら、市販のPichia Expression Systemを購入してTC2の発現を試みたが、この系ではTC2の発現はまったく検出されなかった。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)