TEMPO触媒酸化によるセルロースの化学改質
【研究分野】林産科学・木質工学
【研究キーワード】
セルロース / TEMPO / 触媒酸化 / 表面改質 / ミクロフィブリル / 水系媒体 / 金属捕捉材 / 機能材料 / 酸化 / ポリウロン酸 / 機能化 / 固体NMR / セロウロン酸 / 分子量 / 分子量分布
【研究成果の概要】
2,2,6,6-テトラピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒量用いる水系での天然セルロースの化学改質について、詳細に検討した。リンターを出発天然セルロースとして用い、反応時間あるいは共酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムの添加量を変化させた場合に導入されたカルボキシル基量およびアルデヒド基量を測定した。その結果、酸化前後でリンターの繊維形態はほとんど変化しておらず、ほぼ100%ろ過によって繊維状固形分として回収できた。このTEMPO触媒酸化リンター中のカルボキシル基量は最大で約35倍に増加し、アルデヒド基量は1000倍にまで至った。一方、元の天然セルロースが有するセルロースI型の結晶構造は変化しておらず、また、X線回折、固体NMR分析から、セルロースI型の結晶化度および結晶サイズも変化していなかった。すなわち、天然セルロースの結晶性ミクロフィブリルを維持しながら、その表面に効率的にカルボキシル基、アルデヒド基という官能基を導入することができた。このように表面化学改質したセルロースは特異的な金属イオン吸着挙動を示し、特にカルシウム、銀、鉛イオンとはカルボキシル基と1:1で金属塩を形成した。更に、TEMPO触媒酸化した木材化学パルプ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、ラミー、木材ホロセルロース等に適用したところ、特有のカルボキシル基、アルデヒド基導入挙動を示し、軽微な機械的処理によって透明ゲルを調製することができた。これは、従来の分子レベルで溶解した粘調溶液とは異なり、ナノサイズ幅のミクロフィブリルを構成単位としており、特有の溶液機能の発現が期待される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
鮫島 正浩 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
小野 拡邦 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】14,000千円 (直接経費: 14,000千円)