新規超分子医薬品によるオートファジー制御と悪性腫瘍治療法の開発
【研究キーワード】
高分子 / ナノテクノロジー / 超分子 / がん / ロタキサン
【研究成果の概要】
本研究では、精密高分子合成とナノテクノロジーを巧みに用いることにより、世界ではじめて全身投与によって部位特異的にオートファジーを制御(on/off)し、腫瘍を縮小あるいはがんの進行を抑制させることが可能な注射剤の開発を行っている。具体的には(1)環状構造を有する疎水性低分子薬剤・ラパマイシンやバフィロマイシンなどの分子内にあるオングストロームサイズの空間空隙を生体適合性高分子化合物で縫い合わせて水溶化させる技術を確立し、この技術によってポリロタキサン様の構造を有する新規水溶性超分子医薬品を開発している。さらに(2)これらの新規薬剤の全身投与によって、頭頸部がんや脳腫瘍などの悪性腫瘍に対する革新的な治療法の提供を目指している。初年度は、直鎖状高分子であるポリエチレングリコール(PEG)と環状分子であるラパマイシンの分子縫合、すなわち超分子形成について詳細に検討した。PEGの分子量と末端官能基、ならびに反応溶媒の極性を変化させながら、PEGとラパマイシンの反応を核磁気共鳴スペクトル(1H NMRならびに2D-NMR)、円偏光二色性(CD)、およびゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて追跡することにより、擬ロタキサンを形成する最適な反応条件を見出した。また、ローダミンをキャッピング分子として選択することで、生成したロタキサンを単離することにも成功している。さらに、頭頸部がん細胞(HSC-2)を用いて細胞シグナリングを調査した結果、擬ロタキサン、ロタキサンの両方においてオートファゴソームとLC3Bの増加が確認された。このように本年度は、本研究の分子設計の妥当性とin vitroレベルでの薬理効果が示されており、当初計画通りに研究が進行している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
松井 誠 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 特任助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2021-07-09 - 2025-03-31
【配分額】25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)