末端カルコゲニド配位子をもつモリブデンおよびタングステン錯体の合成と反応
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
スルフィド錯体 / セレニド錯体 / 炭素-硫黄結合切断 / 炭素-セレン結合切断 / 環化付加反応 / モリブデン / タングステン
【研究成果の概要】
本課題では、末端カルコゲニド配位子をもつ第6属遷移金属モリブデンおよびタングステン錯体の新規合成法の開拓および反応性について研究を行なった。取り扱う化合物はすべて空気、湿気に不安定なため設備備品として購入した高真空ポンプを利用した合成ラインで実験を行なった。
タングステン錯体Cp*WCL_4(Cp*=C_5Me_5)とLi_2(SCH_2CH_2S)の反応では炭素-硫黄結合切断が起こり、[Cp*W(S)_3](1)が得られた。一方、Cp*MpCl_4を用いた類似反応からは[Cp*No(SCH_2CH_2S)_2](2)のみが得られたが、Cp*Mocl_4とLiSCMe_3の反応から得られるCP*Mo(SCMe_3)(3)と硫黄を反応させ、Cp*Mo(S)_2(SCMe)(4)を生成させた後、Li_2S_2と反応させることにより[Cp*Mo(S)_3](5)が得られた。さらに、セレニド錯体[Cp*W(Se)_3(6)はCp*WCI_4とLiSeCMe_3、続いてLi_2Se_2を反応させることにより得られた。しかし、半サンドイッチ型[Cp*M(E)_3](M=Mo,E=Se,Te;M=W,E=TE)錯体の単離には現在、成功していない。
スルフィド錯体_1および5はジフェニルアセチレンと[2+3]型環化付加反応し、1,2-エンジチオラート錯体[Cp*M(S)(S_2C_2Ph_2)](M=Mo,W)を生成する。この反応速度は錯体および基質それぞれに対し一次であり、モリブデン錯体はタングステン錯体よりも5倍の速度で反応が進行する。これは錯体5の方が錯体1よりも中心金属が還元されやすいためである。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1996
【配分額】1,000千円 (直接経費: 1,000千円)