新規熱可塑性セルロースエステル誘導体類の調製
【研究分野】林産科学・木質工学
【研究キーワード】
セルロース / エステル / 誘導体 / ケテンダイマー / ベータケトエステル / ポリマーブラシ / 包摂化合物 / 液晶 / 塩化リチウム / アルキルケテンダイマー / セルロース溶液 / 均一反応
【研究成果の概要】
微結晶セルロース粉末(重合度250)を塩化リチウム/1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンに溶解させ、溶解均一状態を維持しながら種々のアルキルケテンダイマーあるいはアルケニルケテンダイマーを塩基触媒としてセルロースに反応させ、得られたセルロース誘導体の化学構造、収率、溶液物性、熱的性質、固体構造解析等を進めた。その結果、以下の結果が得られた。
(1)常温で液体状態であるオレイン酸ケテンダイマーを反応試薬として、反応時間、反応温度、試薬添加量、塩基触媒の添加量等の観点から、セルロース水酸基へのケテンダイマーの導入量を検討した。その結果、最大で置換度2.1のセルロース/オレイン酸ケテンダイマーによるβ-ケトエステル誘導体が得られた。
(2)最大置換度を与える反応条件は、室温下で塩基触媒を加えて3時間以上の攪拌であった。一方、反応時に60℃あるいは100℃に加熱すると置換度は低下した。これは、ケテンダイマーが加熱によって多量体に変換する副反応のためであることが判明した。なお、この副反応物質はケテンダイマー2量体〜20量体のオリゴマーであり、MALDI-TOF/MAS分析から、環状構造を有した特異的な化学構造を有していることが示唆され、現在詳細な検討を進めている。
(3)得られた長鎖アルキル基あるいはアルケニル基を有するセルロースβ-ケトエステルは、有機溶剤に可溶で熱可塑性を有していた。また、溶液状態では、屈曲性のコンフォメーションを有しながらも、セルロース主鎖部分は固体状態のような運動の強い拘束を受けており、特異的な溶液物性を示すことがSEC-MALS分析、NMR分析等から明らかになった。
(4)セルロース以外でも、アミロース、カードラン、プルラン、ポリビニルアルコール等にケテンダイマーをベータケトエステル結合で導入した場合も、上記と同様な特異的溶液物性を示すことから、長鎖アルキル基あるいはアルケニル基を有したβ-ケトエステルに共通する機能である。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)