不斉自己触媒反応の開拓に基づく不斉の発生と自己増殖の研究
【研究分野】有機化学
【研究キーワード】
不斉自己触媒 / 不斉自己増殖 / 不斉合成 / 不斉の起源 / 円偏光 / 水晶 / ピリミジルアルカノール / エナンチオ選択的反応 / ジアルキル亜鉛 / 自己増殖 / 反応機構 / アミノ酸 / 塩素酸ナトリウム / H偏光
【研究成果の概要】
キラルな分子が自己を合成する不斉触媒として作用する不斉自己増殖反応を開発した。キラルな2-アルキニル-5-ピリミジルアルカノールが不斉自己触媒となりジイソプロピル亜鉛のピリミジンカルバルデヒドへの不斉付加反応で合成収率99%以上かつ鏡像体過剰率99.5%ee以上というほぼ完全な不斉自己増殖反応を創製した。生成物を次の反応の不斉自己触媒反応として用いる10回の連続反応により、増殖率は6000万倍に達する。驚くべきことに鏡像体過剰率が低い不斉自己触媒を用いても生成物の鏡像体過剰率が向上することを見出し、生成物を次の反応の不斉自己触媒として用いることにより、0.1%eeから99.5%ee以上にまで鏡像体過剰率を向上させることに成功した。本反応を用いて不斉の起源の検証を行った。円偏光による不斉光分解で2%eeのL-ロイシンに誘起される不斉はわずか2%eeであり、天然ロイシンの100%eeとの関連は不明であった。2%eeのL-ロイシン存在下、ピリミジンカルバルデヒドとジイソプロピル亜鉛との反応を行い高い鏡像体過剰率のピリミジルアルカノールを得た。これにより円偏光の不斉を高い鏡像体過剰率の有機化合物の不斉と初めて関連付けることが出来た。またらせん炭化水素ヘリセン(円偏光により2%ee以下で不斉合成される)存在下でもヘリセンの不斉に対応したピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で得られた。さらに不斉の起源として提唱されている右および左水晶、塩素酸ナトリウムなどの不斉無機結晶存在下で不斉自己触媒反応を行うと不斉無機結晶のキラリティーに対応した絶対配置を持つピリミジルアルカノールが98%eeという極めて高い鏡像体過剰率で得られることを見出した。以上、円偏光あるいは不斉無機結晶という不斉の起源として提唱されている要因をもとに初めて高い鏡像体過剰率のキラル化合物を不斉合成することに成功した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
柴田 高範 | 岡山大学 | 理学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
佐藤 格 | 東京理科大学 | 理学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1998 - 2001
【配分額】37,160千円 (直接経費: 35,300千円、間接経費: 1,860千円)