一原子サイズ欠損分子トリキノリンの化学
【研究キーワード】
π平面 / グラフェン / 強塩基 / キノリン / 非共有結合性相互作用
【研究成果の概要】
TriQuinoline: TQ合成法の抜本的な見直しを行った結果,再現性よく高収率で合成可能なルートの構築に成功した。その物性精査により,予想外の水溶性やプロトンスポンジを遙かに凌駕する強力なプロトン保持能力など,特異物性が明らかとなった。また,平面性多環式芳香族分子のコロネン,湾曲型環状芳香族分子である[12]CPPとそれぞれface-to-faceならびにedge-to-face型の超分子錯体を形成し,DNAに対するインタカレーションも観測された。予備的な生物活性評価においてin vitro実験での腫瘍細胞増殖抑制作用も確認され,新骨格の抗腫瘍化合物のリードとなると期待される。
【研究の社会的意義】
本研究により今までに存在しない分子骨格が化学合成され,その構造特性に基づく特殊物性が明らかとなった。強固なプロトン保持能や超分子形成能は,環境中の有害多環式芳香族化合物の選択除去剤開発への応用研究が見込まれ,強力なDNAインターカレーション活性に基づく抗腫瘍活性は,新たな分子骨格を有する新規抗がん剤リードとして更なる研究展開が期待される。未知の分子骨格を探索する萌芽的研究であると同時に,標的化合物を成功裡に導出・合成するに至った本研究はその学術的意義の証明のみならず,今後の人類福祉に資する社会的意義を持つと言える研究成果であったと言える。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2019-06-28 - 2021-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)