炭素集合体の遷移金属錯体化学(二次元炭素骨格への展開とその情報伝達機能の開発)
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
分子ワイヤー / 分子スイッチ / 鉄錯体 / 不均化定数 / 酸化還元 / 分子回路 / 多核錯体 / intervalence charge transfer band / π共役系 / 二次元炭素骨格 / 三次元炭素骨格 / 情報伝達 / 炭素集合体 / ビニリデン中間体 / ポリエン / ポリイン / 均化定数 / Intervalence Charge Transferバンド
【研究成果の概要】
我々は、炭素同素体を含む多核金属錯体の合成研究を行ってきたが、本研究では、炭素共役系に基づく新しい機能性発現、特に究極の回路ミニチュア化手法である「分子回路」を構成する基本的な部品となる分子ワイヤーとしての機能に焦点を絞って、その高次元化および高機能化を目標として研究を進めた。
1.高次元分子ワイヤーの合成研究
二次元・三次元骨格としてそれぞれエチレン・シクロファンなどを選び、これらのユニットに酸化還元活性な鉄フラグメントを導入する合成方法を検討した結果、鉄フラグメントの立体反発を回避することができれば複数の金属ユニットを含む高次元分子ワイヤーを合成できることを明らかにし、分子構造を各種スペクトルおよび結晶構造解析で、情報伝達能を電気化学的手法で決定した。
この研究から派生して、エンジイン骨格誘導体を合成し、その物性を検討した結果、これらがオレフィン上の置換基によって情報伝達能を調整できるtunable molecular wireとなること、また芳香族基を導入することにより、これまで最も高性能を示したポリインジイル錯体をしのぐ最大級の性能を示すことを明らかにした。
2.スイッチング機能の導入
高機能化の手始めにスイッチング機能の導入を検討した。応答機構としてフォトクロミズムに着目し、ジチエニルエテンを採用した結果、得られた二鉄錯体は有機物と同様なフォトクロミズムを示すこと、また可逆的な閉環-開環サイクルによる情報伝達能のON-OFF変化は39倍に達し、分子ワイヤー型スイッチとしては最大の性能を示した。この他、pH変化でスイッチング機能を発現する系についても研究を行った。
以上の研究は分子回路の基礎研究として大きくステップアップしたもので、その開発に大きく資するものであり、今後複合化の方向を目指して新たな研究プログラムが望まれる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高尾 昭子 | 東京工業大学 | 資源化学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2006
【配分額】15,000千円 (直接経費: 15,000千円)