溶融アルカリ水酸化物の中性子回折を主とした構造解析
【研究分野】構造化学
【研究キーワード】
溶融塩 / 水酸化物 / 液体構造 / 中性子散乱 / ラマン散乱 / 分子動力学シミュレ-ション / 回転緩和 / 振動緩和 / 計算機シミュレーション / 構造
【研究成果の概要】
1.本研究において新たに試作、開発した、ニッケル合金を耐食材料として採用した測定セルを用いて、溶融水酸化リチウムに対し、これまでの測定に加えさらに充分な統計量を有する中性子散乱測定を行った。この結果と、分子動力学計算とを相補的に用いることにより、溶融水酸化リチウムに対し、以下のような詳細構造を明らかにした。
(1)リチウムイオンは水酸化物イオンの酸素側、OH軸と115゚の方向に、酵素原子から1.95Aの位置に最も大きな存在確率を示す。これは、真空中におけるリチウムイオンの配位位置と相当異なり、集団系としての特徴を反映したものである。
(2)リチウムイオンは酸素側に配位すると同時に、ある程度水素側にも配位している。結晶においては水素側には存在せず、これは液体の乱れた構造としての特徴である。
(3)水酸化物イオンはリチウムイオンのまわりに正四面体配位を、またリチウムイオンは水酸化物イオンの酸素原子側直下に多少折れ曲がった平面配位構造を、その骨格構造としてとる。
これらを通して、強い相互作用を有するク-ロン液体の特徴を、詳細かつ正確に把握することに成功した。
2.ラマン分光においても、前年度までに開発したセル等を用いて、一連の溶融アルカリ水酸化物に対する測定を実施した。この結果、振動緩和速度は対陽イオンに大きな依存性を有するが、回転緩和速度はそれほど依存しないことが示された。さらに、回転緩和には、librationに基づく小さな時間での速い振動的な緩和過程と、液体の構造緩和を伴う回転に基づく、大きな時間での比較的遅い緩和過程の二種類の過程が存在することが示された。
【研究代表者】