表面増感第二高調波発生・ハイパーラマン分光法による電極表面反応過程の構造化学的研究
【研究分野】構造化学
【研究キーワード】
表面増感第二高調波発生 / ハイパー・ラマン / 電極表面反応 / 時間分解ラマン / ビオローゲン / カチオンラジカル / マンガンポルフィン錯体 / 表面増感ラマン分光法 / ヘミシアニン色素 / LB累積膜 / 第二高調波発生 / 時間分解ラマン分光法
【研究成果の概要】
NdYAGレーザを光源(10Hz、パルス幅15nsec)とする表面増感ラマン分光法とハイパーラマン分光法による電極表面反応過程解析のための装置の試作し、(i)ヘプチルビオローゲンジカチオン(HV^<2+>)の一および二電子還元過程の動的過程の解析、(ii)マンガン(II/III)テトラフェニルポルフィン(MnTPP)の酸化還元過程にともなう構造緩和過程の解析、(iii)減衰全反射ラマン(ATRラマン)分光法による液晶分子の電場配向過程の解析を行なった。以下に、これまでに得られた主な研究成果をまとめて記す。
(1)白金および銀電極表面でのHV^<2+>の一電子還元にともなうモノカチオンラジオカル生成過程を時間分解共鳴ラマン分光法により解析した。その結果、表面でのラジカルフィルム生成の初期過程が核の生成と三次元的な成長からなること、その後一次元的な拡散律速過程で反応が進行すること、ラジカルが2〜3分子層を形成後に相転移を起こすこと、反応の初期においてはラジカルが二量体を形成すること、などを明らかにした。
(2)銀電極表面でのヘプチルビオローゲン・モノカチオンラジカルの一電子還元による中性種の生成過程についても、時間分解表面増感ラマン分光法を用いて調べ、電極電位の-0.6→-1.2V(vs.Ag/AgCl)の掃印にともない、中間体を生成した後、中性種を生成することを確かめた。スペクトルを詳しく検討した結果、ラジカル二量体は分子面を電極表面に対してほぼ垂直に配向し吸着しているのに対して、中間体は電極表面に対してフラットな配向を取っていると結論された。すなわち、還元反応に先立ち吸着種の配向変化が存在することが確かめられた。
(3)軸配位子としてCl^-を持つポルフィリン錯体Mn(III)TPPClの白金電極表面での一電子還元による二価錯体(Mn(II)TPP)生成過程を時間分解共鳴ラマン分光法を用いて解析した。中心金属の三価から二価への変化は極めて速い過程であるが、それにともなう軸配位子の脱離過程は拡散律速で我々の装置で十分追跡可能であると思われる。時間分解スペクトルは、中心金属は二価でかつ軸配意子を保持した反応の中間体に帰属されるラマン線を示した。現在、スペクトルを解析してその構造の詳細を解明すべく研究を進めている。
(4)高屈折率の半円筒型プリズム(ShottガラスLaSF-8)の底面を電極とする液晶セルを装備した、時間分解ATRラマン分光装置を試作し、ネマチック液晶6CBの電場配向に伴なうラマンスペクトルの時間変化を測定した。現在、入射角度を変化させつつスペクトルを測定し、電極界面と液晶分子との相互作用が電場配向過程を如何に規定するかを明らかにするべく研究を進めている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高橋 博彰 | 早稲田大学 | 理工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1991 - 1992
【配分額】7,300千円 (直接経費: 7,300千円)