両極の氷床コアと全球気候植生モデルによる過去1万年のメタン濃度の変動要因の解明
【研究キーワード】
メタン / 氷床コア / 完新世 / 温室効果ガス / 気候変動 / グリーンランド / 南極
【研究成果の概要】
2020年度はグリーンランドのNEEM氷床コアから、過去1万年間のメタン濃度のほか、合計8成分(CH4濃度, N2O濃度, CO2濃度, δ15N-N2, δ18O-O2, O2/N2, Ar/N2, 空気含有量)の大気組成データの取得を進めた。グリーランドの氷床コアに共通して、完新世の多くの期間に相当する深度帯は、割れやクラックが多く氷の質が悪いという特徴がある(ブリットルゾーンと呼ばれる)。微小なクラックに現在大気が混入したりすることで汚染が発生しやすく、先行研究においてブリットルゾーンではメタン濃度を高精度で分析することが難しいという問題点があった。本研究で用いたNEEM氷床コアも600 -1300m深(約2500-10000万年前)がブリットルゾーンに該当し、氷の質が極めて悪い試料が散見されたが、セラミックナイフを用いて丁寧にクラックを除去したり、真空引き時間を海外の研究機関の6倍の長さにするなどの工夫を凝らすことで、ブリットルゾーンにおいても汚染の影響を低減した質の高いメタン濃度の測定に成功した。ガスクロマトグラフによる分析については、試料容器交換時にわずかに混入する大気を完全に排除するための真空排気装置を新たに設置し、試料導入箇所の真空度を高めた。これらの工夫により、メタン濃度を3ppb(1σ)という高精度で安定して取得することに成功した。また、東北大学において、国立極地研究所で使用しているガスクロマトグラフ用標準ガス(CH4, N2O, CO2)の濃度を東北大学の温室効果ガス測定装置で分析し、標準ガス濃度スケールの相互検定を実施した。
【研究代表者】