第二次大戦後の統制解除・市場経済復帰過程 : 日本のおけるディレギュレーションの経験
【研究分野】経済史
【研究キーワード】
物資需給計画 / 戦後経済復興 / 傾斜生産 / 企業再建整備 / 金融機関再建整備 / 配給機構 / 食糧営団 / 賠償問題 / 復興 / 戦後改革 / GHQ / インフレーション / 配給統制 / 統制解除 / 経済統制 / 占領政策 / ディレギュレーション / 朝鮮戦争 / 戦復改革
【研究成果の概要】
都市・生産施設の破壊と経済運営の麻痺による著しい停滞状態を脱するため、復興のための新たな経済統制が実施された。戦時・戦後にわたる10年間の統制経済の経験は、様々な特徴を日本経済に刻印することになった。この共同研究では、第二次大戦後の経済復興と自立的経済への復帰が、どのような統制政策を経て実現し、その一連の過程がわが国の経済発展にどのような意味をもつのかを検証した。
われわれが獲得した成果は、次の諸点である。
(1)政府による市場調整政策の定着 戦時の物資動員計画、戦後の物資需給計画を中軸とする市場調整政策は、希少資源の戦略的効率的利用を図る目的で、基礎資材・生活物資・食糧・産業資金等で実施された。そうし措置は、政府による外貨割当制、カルテルに代わる市況調整、投資調整など、1970年代まで形を変えながら継続した市場調整政策の前史をなしている。
(2)統制による合理化効果の定着 資源の戦略的割当を長期にわたった実施した結果、民需産業の全面的縮小を招いたという面は否めない。しかし労働力の過剰を背景に形成された複雑で多段階の商取引と物流システム、弱小零細金融機関を組織した決済網、機械工業におけるブローカーを介した資材・部品取引など、わが国経済の高コスト体質は資源割当、価格統制、企業整備、取引方法の変更等によって人為的に再編され、低生産性企業の整理、流通費用・取引コスト削減をはかる様々なシステムが開発された。
(3)政策形成・実施における社会的組織化の定着 統制システムの転換や運行、統制解除後の新システムの運営に当たって、種々のレベルの経済団体、労働団体の組織的協力が不可欠のものとなった。
これらは、依然仮説的な側面を持つものとはいえ、戦後経済研究の新たな課題と視点を提示するものである。
【研究代表者】