企業の異質性を伴う内生成長理論による長期停滞の構造分析
【研究分野】理論経済学
【研究キーワード】
イノベーション / インフレーション / 経済成長 / 金融政策 / 資源再配分 / 最適インフレ率 / 内生的成長 / 長期停滞 / 内生成長 / 異質的企業
【研究成果の概要】
本研究は,日本の経済成長の長期的停滞のメカニズムを探究するため,金融政策をはじめとする貨幣的ショックが経済成長に対して持つ影響を分析している.特に注目しているのは,イノベーション能力に異質性のある企業間の資源再配分効果である.イノベーション能力が高い企業がより多くの研究開発資源を利用できれば,全体的な研究開発の効率性が高まり,経済成長,ひいては経済厚生を改善する可能性があるが,そうした再配分機能がうまく働かなければ停滞してしまう.
本研究の貢献の一つは,企業の研究開発をエンジンとする内生的経済成長の理論に,価格改定の費用によって生じる名目価格の硬直性を導入することで,インフレ等の貨幣面での変化が実物的な経済成長と,それに伴う企業淘汰・資源再配分に影響する理論モデルを構築したことである.また,その理論に照らして日本企業の財務や研究開発支出のデータを検証することにより,企業によってインフレに対する反応が異なり,企業規模の差が研究開発投資の差をさらに膨らませる傾向が生じて,インフレ化で企業間の規模格差が拡大することを見出した.これは,インフレはイノベーション能力が高い企業に資源が振り向けられるトリガーになりうること,さらに言えばインフレに経済成長を促進する効果があることを示唆している.こうした結果は最適インフレ率の議論につながり,若干のプラスのインフレ率を目指す金融政策目標に対し,従来なかった側面から理論・実証両面でのバックボーンを与えるものになる.
昨年度は,国際学会やセミナー等での研究報告を通じて得られたフィードバックを反映させる形で論文の改訂を行い,国際学術誌に投稿し,掲載が受諾された.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2017-04-01 - 2023-03-31
【配分額】3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)