エディアカラの海での気候激変と動物進化の因果関係の解明
【研究キーワード】
新原生代 / 古海洋 / 動物進化 / バイオマーカー / 古土壌 / ストロマトライト / 全球凍結 / 海水組成 / 海綿動物 / エディアカラ紀 / 化学層序 / 安定同位体 / 気候変動
【研究成果の概要】
本研究は「全球凍結後の層状化海洋でのエサの増加が多細胞動物の進化を促した」という独自の仮説を検証するために,海綿・刺胞動物由来の痕跡を含む世界各地のクリオゲニア~エディアカラ系堆積岩を対象に多項目の分析を行うものである。
コロナ禍で海外渡航が制限されていたため,今年度は比較検討対象として熊本県天草市および佐賀県唐津市の始新世堆積物についての野外調査を行った(狩野)。この調査では,土壌成堆積物と湖成堆積物を調査し,組織観察と鉱物・同位体分析結果をもとに,始新世初期には乾燥していた九州地方が始新世後期には湿地が発達するほどの湿潤気候に変化したことを明らかにした。現在,その成果を公表するために論文を執筆中である。また,昨年度調査を行った新潟県糸魚川市の石炭系古カルストについての成果をまとめ国際誌に論文を公表した。
調査は出来なかったものの,中国・ブラジル・オーストラリアで採集したサンプルの分析を進めた(古山・白石・奥村・狩野)。中国からは過去のトラバーチン環境を示す試料が見出され,その堆積場の状況について復元し,その成果については国際誌に論文を公表した。また,この研究を主体的に行った学生は,3月に博士号の学位を取得している。ブラジルの試料からはエディアカラ紀前期の微生物岩についてイオウ細菌が持つバイオマーカーが検出され,当時の海洋層状化が示唆された。オーストラリアの試料からはクリオジェニア紀の炭酸塩岩に含まれる海綿様の粒子の構造が詳細に検討され,現在の棘皮動物骨格に見られる微細な穴構造(ステレオーム)があるものと評価された。ステレオームの網目状構造は海綿動物の水管システムとも類似しており,より多くの試料観察を行い,両者の類似性について考察を進めることは意義深い。
【研究代表者】