地球気候の本質的理解に向けた温室地球時代の海水温季節変動動態の解析
【研究キーワード】
古環境 / 温室地球時代 / 古水温 / 海水温季節変動幅 / 海洋無酸素事変 / 古環境学 / 古海水温 / 海水温季節変動
【研究成果の概要】
本研究では,地球温暖化時代の極相期の一つである白亜紀中期セノマニアン期からチューロニアン期(CTB;約9千4百万年前)に生じた海洋無酸素事変を対象として,平均古水温の緯度勾配と,古水温の季節変動幅との時系列変動を明らかにする.平均古海水温の算出に加え,海水温の季節変動幅の算出から,炭素循環擾乱イベントに対する海水温の動的応答の解析を行うことで,温室時代の気候フィードバックがどのような順序で,どのような時間スケールで生じたのかを明らかにする.2020年度は,早稲田大学現有の連続フロー型安定同位体比質量分析計を用いて,堆積物中の有機炭素および全窒素安定同位体比分析を行った.堆積物全岩試料を乾燥させ,均質に粉末化した後に脱灰し,これらを安定同位体比分析に使用した.黒色頁岩が産出する層準では,堆積物中の有機炭素含有量が20wt%を超える層準が確認され,CTBに生じた海洋無酸素事変の層準を確認した.また,海洋無酸素事変が発生した層準よりも下位の層準でも有機炭素含有量の増加を検出した.この層準は大規模な海洋無酸素事変の前駆的現象である可能性があり,今後詳細な検討を行う.有機炭素同位体比は黒色頁岩が産出する層準よりも有意に下位の層準から増加し始め,黒色頁岩層準で最大に達した.また,炭素同位体比の変化に同調して,堆積物中の炭素/窒素含有量比も大きく変化することから,海洋無酸素事変に並行して堆積物に供給される炭素の給源組成に変化が起きていたことが推測される.
【研究代表者】