ヘリウムスピントロニクスの開拓
【研究キーワード】
物性物理 / スピントロニクス / 低温物性 / 量子流体固体 / ヘリウム / スピン流
【研究成果の概要】
本研究は、液体ヘリウムにおけるスピントロニクスの開拓を目指して、液体3Heおよび3He-4He混合液中で渦度生成により誘起される3He核スピン流を、白金に代表される金属壁中の電子スピンホール電流に変換する技術の開発を行うものである。
2021年度は、本研究を行うための希釈冷凍機装置の開発を行った。本研究の実験には、液体3Heおよびおよび3He-4He混合液が十分にフェルミ縮退する10mK以下の低温が必要となる。このような超低温度は希釈冷凍機、または希釈冷凍機と核断熱消磁装置の組み合わせにより実現可能であるが、近年の液体ヘリウムの入手難により、従来の冷凍装置の運用が困難となった。このため、現有の希釈冷凍機をパルスチューブ冷凍機と結合させて、無冷媒希釈冷凍機として動作させることを試みた。現在まで、希釈冷凍機ユニットを4K程度まで予冷する機構に問題があり、冷凍装置の十分な動作には至っていないが、予冷用ヘリウムガス循環装置を組み込むことで、正常な希釈冷凍動作が行える見通しを得た。
またスピン流検出実験については、液体の流速と金属壁として用いる白金膜の厚みを検討して具体的な実験条件を決定し、それに基づいたスピンホール電流の詳細な見積と実験装置の設計を行った。さらに、多孔性を有する金属を液体ヘリウムの流路に用いることで、渦度および乱流状態を生成するという新たな着想を得た。この方法におけるスピン流検出の可能性について、検討を行った。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)