XAFS法を駆使した硫酸エアロゾルの生成過程と地球寒冷化への影響の解明
【研究分野】地球宇宙化学
【研究キーワード】
XAFS / エアロゾル / 地球寒冷化 / 硫酸塩 / 電子収量法 / XAFS分析
【研究成果の概要】
エアロゾルは大気中に浮遊する液滴や粒子で、地球表層に様々な影響を及ぼす。その1つとしてエアロゾルによる地球冷却効果が挙げられるが、その見積りには大きな不確実性が残っている。硫酸エアロゾルはエアロゾルの主成分の1つであり、主に微小粒子中で吸湿性の高い硫酸アンモニウムとして存在することから、雲凝結核 (CCN)として作用し、生成した雲が太陽光を散乱することで間接的冷却効果を示す。しかし、硫酸エアロゾルの中には吸湿性の低い石膏(CaSO4-2H2O)もあり、その化学種は粒子の吸湿性を左右するが、エアロゾル中の硫酸塩化学種を定量的に明らかした例は少ない。一方、東アジア域は硫酸の重要な反応相手である鉱物粒子の主要な排出源のひとつである一方、カルサイトの放出量も他地域に比べて高く、エアロゾル観測から硫酸エアロゾルの化学種や鉱物粒子中のカルサイトとの反応による硫酸エアロゾルの変化を理解することは地域的にも全球的にも重要である。そこで本研究では、能登半島で採取したエアロゾルの分析を行った。その結果、黄砂の影響が大きい春には石膏が粒子中で形成されることにより硫酸エアロゾル全体の最大30%(年平均約10%)に相当する吸湿性の硫酸エアロゾルが減少し、硫酸エアロゾルのCCN作用への影響の大きさが示唆された。また、同試料の硫黄同位体比・微量金属元素濃度・後方流跡線分析解析の結果から、硫酸エアロゾルの起源と大気輸送中の反応の効果について議論した。また研究では、排出源の特徴を有する微量金属元素と、硫酸エアロゾルの硫黄同位体比を組み合わせた考察を初めて実施した。さらに重油・石油燃焼と石炭燃焼の起源物質の指標として用いた亜鉛(Zn)やニッケル(Ni)など微量金属元素について、大気中濃度の粒径分布が粒子生成過程を反映していることを化学種分析の結果と元素の揮発性の違いから示した。
【研究代表者】
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2017-11-10 - 2020-03-31
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)