金属元素の気化過程に伴う同位体分別に基づく環境地球化学の新展開
【研究分野】地球宇宙化学
【研究キーワード】
金属元素 / 気化 / 同位体分別 / 環境地球化学 / エアロゾル / 化学種 / 人為起源 / 安定同位体 / 同位体 / 鉄 / 同位体比
【研究成果の概要】
外洋域における生物一次生産の制限要因の一つとして溶存鉄(Fe)の不足が挙げられる。海洋表層へのFe供給源のうち、エアロゾル中の人為起源Feは自然起源Feよりも水への溶解度が高いと報告されているが、表層海水中の溶存鉄に対するそれらの寄与の程度は明らかでない。本研究では、エアロゾル中の人為起源鉄に着目して、生成プロセスや溶解性にも着目しながらδ56Feから海洋表層への寄与を評価することを目的とした。その結果、微小粒子ほど(水)酸化鉄の割合が高く、その同位体比は地殻物質に比べて非常に低い値を示すことが分かった。この結果は、δ56Fe が燃焼由来の人為起源鉄のトレーサーとして利用できることを示唆する。
【研究の社会的意義】
本研究では、気候変動にも影響を与える海洋の生物一次生産の支配因子であるエアロゾル中の溶解性鉄の濃度に、人為的な燃焼由来の鉄が影響を与えることを、微量な鉄安定同位体比の分析から明らかにした。特に発生源近傍での分析などからこの同位体分別を明確にしたことと、実際の北太平洋での観測から粒径が小さな成分で鉄安定同位体比が低かったことから、海洋エアロゾル中の人為起源の鉄の寄与を明確にした点が特筆される。また鉄安定同位体比と鉄の水溶解性には正の相関があり、人為燃焼起源鉄ほど海洋への溶解率が高いことが示唆された。そのため、絶対濃度は低くても、人為燃焼起源鉄の海洋一次生産への寄与は無視できないことが示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2016-04-01 - 2020-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)