日本海の受動的海陸境界の地震学的構造とその形成過程
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
日本海 / 大和堆 / 北大和トラフ / 海底地震計 / 地震波速度構造
【研究成果の概要】
日本海では近年,大和海盆,対馬海盆,日本海盆北東部・中央部で構造探査実験が行われ,各地域の地震波速度構造の差異がより明らかになった.このような日本海の地殻構造の地域性が日本海の形成と密接な関係にあると考えられる.北大和トラフは.日本海中央部の大和堆の中に存在する北東-南西方向のトラフであり,厚い大陸地殻から薄い海洋地殻に変化している境界域であると考えられている.この地域の詳細な地殻構造を求め,他地域の構造と比較することにより,日本海における海盆形成時の情報を引き出すことが可能である.この観点から昨年度は東京大字海洋研究所の研究船淡青丸KT97-16次航海において,海底地震計(OBS)を用いた北大和トラフの構造探査実験を行い,十分な質と量のデータを取得した.本年度は,これらのデータ解析を行い,北大和トラフの詳細な2次元P波速度構造を求め,その形成過程を考察した.
各OBSにおいて,τ-sum inversion法をを行い,直下の一次元構造を求めた.その一次元構造を基に,2次元波線追跡法を用いて,測線下の2次元速度構造モデルを求めた.堆積層は測線中央部で厚さ約1.5kmである.反射法地震探査で見られる音響基盤はP波速度約4.2km/s,厚さ約1kmの層に対応する.その下には,P波速度6.0-6.4km/sの層が厚さ2〜2.5kmで測線下全体に存在する.また,モホ面から反射と思われる波の走時を用いて推定したモホ面の深さは海面下14kmである.下部地殻のP波速度は6.6〜6.8km/s,厚さは7〜8kmである.北大和トラフの地殻構造は,リフィテングにより地殻が薄化したと考えられる対馬海盆南部の速度構造に類似しており,北大和トラフは同様の過程で形成され,海洋底拡大には至っていないことを強く示唆する.
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)