数値シミュレーションに基づいた誘発地震の発生メカニズムの研究
【研究キーワード】
法線応力に依存するNagata則 / SSEのトリガー / 地震のトリガー / 2016年三重県沖地震 / 地震トリガー / 誘発地震 / シミュレーション
【研究成果の概要】
円形アスペリティを仮定し,地震トリガーに関する数値シミュレーションを行なっている.摩擦則は我々の研究室で求めた,実験データを従来の摩擦則より再現できるNagata則(Nagata et al., 2012)を用いており,信頼性の高いシミュレーションが可能である.本研究ではさらに,法線応力変動の影響も取り入れたものに拡張した.地震サイクルのある時点で,応力擾乱を与えると微小滑りが起こり,強度が下がる(滑り弱化).擾乱の振幅が大きくなるにつれ,大きな滑り弱化が起こり,地震滑りに至るまでの時間が短くなる.これまでの研究により,応力擾乱の周波数依存性はほとんど見られないこと,静的応力擾乱を与えた場合は,動的応力擾乱の場合より小さな応力変化量でトリガーされ,応力変化量の大小だけでトリガー効果を見積もることはできないこと,などを示してきた.また,ある動的応力変化に対し,トリガー効果が等価な静的応力変化量も評価した.今年度は,より現実的な初期法線応力が不均一な場合も扱えるように計算コードの改良を行い,スロースリップイベント(SSE)のトリガーについて調べた.同じ半径のアスペリティでも,摩擦パラメータの値を変化させると不安定―安定状況が連続的に変わり,周期的地震,周期的SSE,安定すべりなどが発生する.周期的SSEが起こっているときに,様々なタイミング,振幅で応力擾乱を与えた.擾乱の振幅が大きくなるにつれ,SSEの発生が早められ,SSE時の滑り速度が速くなり,継続時間が短くなっていく.さらに大きくすると,高速な地震滑りに移行することを示した.
また,関連する研究として「シミュレーションによる釜石沖繰り返し地震の予測実験の検証」を日本地球惑星科学連合2021年大会で発表した.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)