自己浮上式海底熱流量計による西南日本沈み込み帯の熱的構造の研究
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
地殻熱流量 / 自己浮上方式 / 西南日本 / 南海トラフ / 長期計画 / 熱伝導率 / 放射性発熱量 / 付加体 / 自己浮上式海底熱流量計 / 四国海盆 / 長期温度計測
【研究成果の概要】
1.浅海域での地殻熱流量測定をめざして開発した自己浮上式海底熱流量計をほぼ完成し、長期計測を開始した。
(1)試験的測定として、平成9年4月に相模湾の海底に設置し、5日後に回収した。プローブの防水に不備があったため温度データは得られなかったが、システム全体としては正しく動作した。
(2)実際に熱流量測定を行うために、9年6月に2台を駿河湾の海底に設置した。うち1台は10年1月に回収を計画していたが、海況不良のために実行できなかった。この2台は、10年6月に回収する予定である。
(3)システム全体をさらに小型・軽量化した改良型の装置を製作し、10年1月に海中動作試験を行った。
2.9年10月、前年度に銭洲海嶺の南に設置した長期温度計測装置を回収した。四国海盆が新たに沈み込みを開始しつつあるとされる場所で、1年間の海底堆積物中の温度記録を得た。
3.南海トラフ東部の付加体において、ガス・ハイドレートによる反射面の深さから推定される熱流量分布をまとめるとともに、9年4月にはプロープによる熱流量測定を行った。
4.前年度に引き続き、近畿地方における熱流量測定を実施した。
(1)孔井内の温度データが存在する地点について、熱伝導率の測定を行い、前年度と合わせて35地点で新たに熱流量が求められた。
(2)淡路島北淡町の野島断層掘削孔に、光ファイバをセンサとする温度計測装置を設置して、長期観測を開始した。温度プロファイルは安定しており、コア試料について測定した熱伝導率データを用いて熱流量を求めることができた。また、放射性発熱量の測定も行った。
5.これらの結果に基づいて、西南日本沈み込み帯の温度構造について検討を行っている。紀伊半島南部付近の高熱流量は、付加体中の物質の流動を反映している可能性がある。
【研究代表者】