同位体大循環モデルを用いた大陸規模水循環の解明
【研究分野】気象・海洋物理・陸水学
【研究キーワード】
水循環 / 安定同位体 / 大循環モデル / 物質輸送 / 輸送スキーム / 降水 / 陸面蒸発 / ユーラシア大陸 / 大陸規模水循環 / 大循環モデル(GCM) / 水収支 / 雲物理過程 / テレコネクション / チベット高原 / 大気大循環モデル / CCSR / NIES AGCM / semi-Lagrange法 / d-excess
【研究成果の概要】
本研究では全球規模の水同位体循環モデルを作成し、それと観測データとを組み合わせることによって、大陸内部での水循環とその変動についの議論を試みた。
まず、大気大循環モデル(CCSR/NIES AGCM)を拡張した上で、同位体分別のパラメタリゼーションを組み込み、全球水同位体循環モデルを作成した。さらに、氷雲過程、降水蒸発過程、海面からの蒸発過程における動的分別効果の改良、物質輸送スキームの改良を行った結果、既存観測データと比較して良好な同位体比の再現性を持つことが示された。特に、物質輸送スキームに関しては、従来のスペクトル法に代わりフラックス形式semi-Lagrangean法を適用した格子移流スキームを開発した。その結果、極域などでの同位体の再現が大幅に向上することが示された。
チベット、シベリアなどでの同位体観測結果とモデルの結果を比較することにより、チベット域では積雲降水活動にともなう降水の蒸発過程が高いd-excess値の形成に重要であること、シベリアでは水のリサイクルの年々の変動が同位体比を大きくさせていることが示され、水の循環過程とその変動の研究における同位体の有用性を示すことができた。また、南極域における既存データの解析から、エルニーニョにともなう水輸送経路の年々変動が同位体比にも現れることを明らかにした。
さらに、土壌や植物の中の水同位体の観測結果を比較解析することにより、土壌水の取扱い、陸面からの蒸発時における分別過程の導入など、さらなるモデルの改良の方向が明らかとなった。
上記のことから、水の安定同位体の観測結果を定量的に解釈し、大陸規模の水循環の情報を引き出すために必要かつ有力な道具を作成することができたと考えられる。
【研究代表者】