インド洋の海洋循環とその季節、経年変動の研究
【研究分野】気象・海洋物理・陸水学
【研究キーワード】
インド洋 / 海洋大循環モデル / モンスーン / 季節変動 / 経年変動 / インドネシア通過流 / 非発散ロスビー長波 / 沿岸捕捉波 / ロスビー長波 / 海洋物理学 / 吉田-Wyrtkiジェット / ケルビン・ジェット
【研究成果の概要】
インド洋主要海域は勿論、インドネシア海域、アラビア海、ベンガル湾等の細かな循環も解像できる海洋循環モデルを構築した。このモデルを海表面での月平均気候値や経年変化する外力で駆動した結果と、広域衛星データおよび組織的な海洋観測データを総合的に解析し、インド洋の表層海洋循環とその季節、経年変動の描像をつかむと同時に、それらの発生機構を詳しく調べた。その結果、以下の事柄が明らかとなった。
(1)本モデルで再現された季節および経年変動は、潮位計、表層漂流ブイ、XBT、海面高度偏差等の観測データと良く一致し、数値モデル研究の有効性を示した。
(2)インドネシア通過流の一部を成すロンボク海峡の流量は、主に年周期変動と半年周期変動の和で表される。このうち年周期変動は、局所的なモンスーンとこれに伴う沿岸湧昇により励起されている。また半年周期の変動は、中部インド洋赤道域で年2回モンスーンの遷移期に励起されるケルビン・ジェットがインド洋東を岸伝播してくることによりもたらされていることが分かった。一方、もう一つの通過流の流路であるティモ-ル海での季節変動には、オーストラリア南西岸で偏西風帯の南北移動に伴って励起される沿岸捕捉波が重要な働きをしていることが明らかとなった。また、本モデルで得られたインドネシア通過流の力学バランスは、これまで考えられていたような単純なスヴェルドラップ・バランスでは説明できず、そこに含まれない項も重要であることが明らかとなった。
(3)インド洋の南半球熱帯域には、20度等温面で代表される主温度躍層の上下動の季節・経年変動の大きい領域があり、衛星から得られた海面高度変動に見られる大振幅領域とほぼ一致する。これらの変動には、インド洋上のモンスーンに伴うエクマン・パンピングと海洋中の非発散ロスビー長波の両者が重要な働きをしていることが明らかとなった。季節変動に関しては、境界条件となるインド洋東岸での変動はさほど重要ではないが、インド洋東部の経年変動では、太平洋のENSOと連動して現われる東岸での変動も無視できないことが分かった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
升本 順夫 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
和方 吉信 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1994 - 1996
【配分額】7,300千円 (直接経費: 7,300千円)