氷期・間氷期サイクルにおける炭素循環及び気候変動についての理論的研究
【研究分野】気象・海洋・陸水学
【研究キーワード】
炭素循環モデル / 炭素循環 / 氷期・間氷期サイクル / 気候変動 / 生物生産性 / 海洋大循環 / 炭素同位体比
【研究成果の概要】
本研究の目的は、氷期・間氷期サイクルにおける炭素循環システムの変動と気候変動との関係を炭素循環モデルを用いて明らかにすることである。平成10年度は,まず南北1次元エネルギーバランスモデルを用いて大気二酸化炭素濃度と氷期との関係について簡単に調べた上で,昨年度開発した生物地球化学過程を考慮した鉛直1次元海洋炭素循環モデルを改良し,古気候・古海洋学的データを用いた検証を行なった。特に,炭素循環モデルにリン循環を結合させ,海洋における生物生産が表層水中のリン濃度によって制約されるようにしたことで,陸上生物圏を新たな炭素リザーバとして導入してそのリザーバサイズの時系列変動を予報することがはじめて可能となった。その結果によれば,陸上生物圏は氷期寒冷ステージには縮小し,逆に温暖ステージに拡大するという変動パターンを示す。最終氷期最盛期における陸上生物圏サイズの推定値は,植生復元による推定範囲と一致する。一方,海洋混合速度および生物生産性は,寒冷ステージにはどちらも低下し,温暖ステージにはどちらも増加するという変動パターンを示す。この結果の妥当性を検証するため,赤道大西洋中層水の炭素同位対比変動記録と計算結果とを比較した。その結果,中層水の炭素同位対比変動は表層水や深層水とは異なるにも関わらず,モデルの結果は観測記録と良く一致することが分かった。中層水の炭素同位体比は生物生産性及び海洋混合速度と密接な関係にあるため,このことは推定結果の妥当性を強く示唆するものと考えられる。なお,海洋モデルを2次元に拡張する試みはすぐには困難であることが明らかになり,今後の課題として取り組む予定である。
研究成果の公表に関しては,発表済みのものが一編,投稿中および準備中のものが各一編の他,学会等において計14回の発表(予定も含む)を行なった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】1,300千円 (直接経費: 1,300千円)