湖沼における低酸素水塊微細構造の形成過程と維持機構に関する研究
【研究分野】気象・海洋物理・陸水学
【研究キーワード】
湖底泥 / 水温 / 溶存酸素濃度 / 消散係数 / 湖底境界層 / 数値モデル / 内部波 / 琵琶湖
【研究成果の概要】
本研究で得られた研究成果は、以下の通りである。
(1)湖底プラットフォームを用いて、水深90mの深度での堆積物中の溶存酸素濃度測定を複数回実施した。これによると、酸化状態から還元状態に移行する境界層の厚さは3mm程度であり、粘性底層に対応することがわかった。また、冬期における底泥中の溶存酸素濃度の回復は、水温と泥温の差に依存しており、いったん嫌気化した底泥中の酸素濃度はなかなか回復しないことがわかった。
(2)詳細モード超音波流向流速計(ADC-TP-1200F)を湖底に設置し湖底境界層中の平均流と乱流を計測した。これによって、レイノルズ応力を計算した結果、湖底に働く応力が非常に小さいことがわかった。このことから、湖底境界層に存在する濁度は、流れの巻き上げによるものではないことが示唆された。同時に、湖底泥中の温度を測定した結果、直上の水温より高い場所が存在することが明らかになった。すなわち、温度的な不安定が発生しており、これがHydrothermal ventを形成し、湖底泥を吹き上げていることがわかった。このことを、自律型潜水ロボット「淡探」を用いて確認した。
(3)深水湖を対象とした流動場-生態系結合数値モデルを高度化し、湖底近傍の低酸素水塊の形成、維持過程を再現した。特に、内部波に伴う湖底上の振動流により、低酸素水塊が広範囲に移動することが明らかとなった。本研究成果は、今後の気候変動に伴う低酸素水塊の発生予測や、低酸素化の深水性希少生物への影響の予測に有益なものである。
【研究代表者】