軌道アンサンブルの解析による親水性タンパク質-タンパク質間会合の駆動力の解明
【研究分野】生命・健康・医療情報学
【研究キーワード】
ATP結合自由エネルギー / 水和自由エネルギー / 水和エンタルピー / 水和エントロピー / ABCトランスポーター / タンパク質ータンパク質相互作用 / 熱揺らぎ / タンパク質-タンパク質相互作用 / 親水性相互作用 / 軌道アンサンブル / 計算機シミュレーション / 自由エネルギー
【研究成果の概要】
本研究では親水性タンパク質同士がどのような相互作用で会合に至るのかを分子シミュレーションにより調べた。その結果、同種のタンパク質(ドメイン)間の会合現象であっても、それが水溶液中で孤立した分子同士で起こるか、マルチドメインタンパク質中に組み込まれた状況の下で起こるかによって、駆動力が異なることが判明した。後者では、タンパク質全体の構造的制約があるので、着目するドメイン同士の会合は内部エネルギー変化に有利な軌跡をとるとは限らない。その場合は、遭遇会合体形成までは、水和力が会合を誘導する。しかしながら、その後の安定複合体形成までは、状況によらず水和エントロピーと内部エネルギーが駆動力であった。
【研究の社会的意義】
本研究で調べたATPが結合したヌクレオチド結合ドメイン(NBD)同士の会合は、ATPの結合エネルギーによって駆動される過程である。水溶液中の孤立分子間では、ATPエネルギーは静電力として一方のNBDからもう一方のNBDに伝播し会合が誘導される。しかし、マルチドメインタンパク質中では、ATPエネルギーは一度水和エンタルピーのエネルギーに変換されてから会合に必要な引力となるという結果が得られた。生体中のエネルギー通貨はATPであるが、マルチドメインタンパク質中のNBDにATPが結合するとなぜ大きな分子運動が生じるのか必ずしも十分に理解されていなかった。本研究は、教科書にない全く新規な描像を与えた。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2016-04-01 - 2019-03-31
【配分額】3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)