難揮発性包有物CAIから探る太陽系の誕生環境:ニオブ92をトレーサーとして
【研究キーワード】
難揮発性包有物 / カラムクロマトグラフィー / 質量分析 / 化学分離 / 超新星爆発 / ニオブ92 / 同位体二分性 / 炭素質コンドライト
【研究成果の概要】
本研究は「太陽系誕生時における 92Nb(ニオブ-92)存在度分布の解明」を目的とする。具体的には、1 外側太陽系由来である炭素質コンドライトのうち始原的な CV, CR タイプの隕石からCAIを物理的に抽出し、2 研究代表者が開発した高精度クロム-チタン安定同位体測定法と 3 高精度ジルコニウム同位体比分析を組み合わせることにより、CAIがもつ太陽系内の位置情報と92Nb初期存在度の同時決定を試みる。既存値との比較を通して、太陽系の大質量星起源物質の初期分布の探索を行い、太陽系形成時の星間環境・物質循環に関する考察を行う。令和3年度には、テスト段階の測定として、未分類である始原的エコンドライト隕石の元素分離、およびクロム-チタン安定同位体測定、およびジルコニウム同位体比分析を行い、この隕石の太陽系内の位置情報とジルコニウム初期存在度を得た。また、はやぶさ2の初期分析チームの一員として協力し、MC-ICPMSにおけるチタン同位体比分析に必要な試料を従来の3倍以上も低濃度にすることに成功した。これは、今後、CAIのチタン同位体比分析を進めていく上で重要な足掛かりとなった。また、新型コロナウイルスの影響で遅延していた隕石サンプルである炭素質コンドライトの試料の入手も完了し、厚片作成を終えて、CAIの探索作業を開始した。試料の固定には当初エポキシ樹脂を使用予定であったが、抽出の際に岩片単体として扱うことができるアセトンで溶解可能なクリスタルボンドを用いることにした。クリスタルボンドはブランク測定のために溶かした後、試料抽出に影響のない程度の元素濃度であることをICP-MSにて確認した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)