対称性で多様化したトポロジカル相の基礎理論の構築と実現法の提案
【研究キーワード】
物性理論 / トポロジカル秩序 / 冷却原子系 / 人工ゲージ場 / 量子ホール効果 / ボースアインシュタイン凝縮体 / 渦格子 / 量子エンタングルメント
【研究成果の概要】
本研究課題は、対称性により多様化したトポロジカル相(symmetry enriched topological相; SET相)について、具体例の構築、実現法の提案、情報論的・操作論的特徴づけを行うことを目的としている。その舞台として、冷却原子系を中心に理論的研究を進めている。2021年度の成果は以下の2点である。
[1] 磁場中の第二種超伝導体と同様に、人工磁場中のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)においては量子化渦の格子が形成される。我々は、二成分BECに平行ないし反平行に人工磁場を印加した系を考え、渦格子の集団励起および量子揺らぎの効果の研究を行ってきた。特に、2019年度から量子揺らぎの渦格子相図への影響、成分間エンタングルメントの性質、集団励起のリスケーリング関係などに関する結果を得ていたが、一連の結果を整理し、有効場の理論による適切な解釈を与え、論文として発表した。その際、2020年に発表した、人工ゲージ場無しの二成分BECの有効場の理論と成分間エンタングルメントに関する研究で得た知見を活かし、それを人工ゲージ場中の二成分BECに拡張した。
[2] XXZ異方性および4体相互作用を含むスピン1/2梯子模型において、対称性で保護されたトポロジカル相(SPT相)と種々の秩序相が競合する豊かな相図が現れることを、有効場の理論および行列積状態計算により示し、論文として発表した。この結果は、2020年度に発表した、同模型におけるNeel秩序相とvalence bond秩序相の間の連続転移に関する結果を大きく拡張するものである。特に、rung singlet (RS)状態、Haldane状態の捻り対応物がわずかな異方性のもとで現れることを示し、それらが対称群の射影表現に基づくトポロジカル指数によって互いに区別されることを数値的に実証した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)