低次元強相関分子性絶縁体へのキャリアードーピングの試みと新しい電子物性の探索
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
分子性固体 / 金属-絶縁体転移 / 電子相関 / 有機超伝導体 / モット絶縁体 / キャリアードーピング / ウィグナー結晶 / NMR / ウイグナー結晶 / キャリアード-ピング
【研究成果の概要】
本研究では、分子性固体へのキャリアードープをa)BEDT-TTF電荷移動錯体とb)DCNQI金属錯体の2つの物質系で試み、新しい電子物性の探索を目指した。
a)(BEDT-TTF)_4X [X=Hg_<2.89>Br_8,Hg_<2.78>Cl_8]
^<13>C-NMR実験を行う目的で、BEDT-TTFの中心2重結合位置の炭素を ^<13>Cに置換した分子を合成し、この分子を用いて単結晶の成長に成功した。^<13>C NMR実験を行なったところ、バンドフィリング1/2のκ-(BEDT-TTF)_2Xとは著しく異なる結果が得られた。バンドフィリング1/2の常伝導金属相ではNMR緩和率が低温で抑制されるのに対して、この2つの物質では、低温に向かって 1/(T_1T)が増大し続ける。これに伴いNMRスペクトルは次第に幅を広げる。この振る舞いは、これらの系が反強磁性量子臨界状態にあることを示唆しており、バンド幅制御とキャリアー数制御のモット転移近傍の磁性が大きく異なることが明らかとなった。
b)(DI-DCNQI)_2M
まず、出発物質である(DI-DCNQI)_2Agの絶縁相の起源を明らかにする目的で、この物質の^<13>C-NMR実験を行なった。その結果、この絶縁相がウィグナー結晶相であることが分かった。次ぎに、Agサイトに徐々にCuを導入していく過程で、ウィグナー結晶状態がどのように金属相へ変化していくかをみるために、AgをCuで部分置換したドープ試料(DI-DCNQI)_2Ag_<1-x>Cu_xを電解合成し、伝導軸方向電気抵抗率、磁化率を測定した。その結果、Cuを導入して隣同士のカラムに属するπ軌道間に移動積分をランダムに導入していく過程では、まず電荷ギャップを減少させ、ギャップ消失後直ちに金属とはならず、その中間状態としてランダムポテンシャルに起因するアンダーソン局在状態が現れることが分かった。
【研究代表者】