重水素化ポリマを活用した多成分系ナノ複合材料の精密構造解析技術の開発
【研究キーワード】
重水素化ポリマ / ナノ複合材料 / 中性子散乱 / 構造解析
【研究成果の概要】
本研究では、ポリマ分子鎖内の水素(H)を重水素(D)に置換した重水素化ポリマに着目し、中性子散乱におけるコントラストの制御により、多成分系ナノ複合材料の構造解析の実現に向けた基盤研究を実施している。具体的な研究内容は、ポリマ分子鎖内のHをDに置換した重水素化ポリマを合成し、この重水素化ポリマを用いてナノ複合材料を作製し、中性子散乱による構造解析を実施することである。
当該年度においては、重水素化率(DとHの総数に対するDの割合)が制御された重水素化ポリマ(Dポリマ)の合成、中性子散乱測定、溶媒への溶解性評価を実施した。
はじめに、H/D交換反応によりDモノマを合成し、このDモノマとHモノマを混合し、重合することで、重水素化率が制御されたDポリマを合成した。結果として、合成したDモノマのD量にもとづき、DモノマとHモノマの混合比を制御することで、重水素化率が制御されたDポリマが得られた。
つづいて、最も単純な構造のポリマーであるポリエチレン(PE)に着目し、PEと同一の構造を有する低分子化合物に対して、H/D交換反応を実施した。低分子化合物には、より分子量が大きく、常温で固体である、ヘキサトリアコンタンを用いた。結果として、水素圧力、反応時間を制御することで、重水素化率が制御された低分子化合物が得られた。
最後に、重水素化率が制御されたDポリマおよび低分子化合物の中性子散乱測定、溶解性評価を実施した。中性子散乱測定では、Hの数密度に比例する非干渉性散乱の強度が重水素化率に応じて変化すること、Dの導入に起因する干渉性散乱が生じないことが確認された。また、溶媒への溶解性評価では、DポリマとHポリマに顕著な差がないことが確認された。以上より、重水素化率が制御されたDポリマの合成技術を確立するとともに、ナノ複合材料の作製、中性子散乱による構造解析を見据えた基礎データを取得することができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
堀田 篤 | 慶應義塾大学 | 理工学部(矢上) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2025-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)